民主主義が生む嫌米のリーダー
10月、フィリピンのドゥテルテ大統領が「アメリカとは別れた」と中国で発言した。どうも民主化が進んだ国で民衆の支持が高いリーダーは、反米・嫌米になってしまうようだ。
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も就任以来ごく最近まで、アメリカから離れ中国に近づいていった。日本でも民主党の鳩山由紀夫政権にその傾向があった。アメリカの力で民主化されたイラクでもエジプトでも、そうだった。
米国内でも、同じような政治家が出てきた。トランプ大統領候補だ。トランプ氏は、ドゥテルテ大統領と奇妙な共通点を持っている。
・排他的に決めつける言動により、民主主義プロセスを通じて大衆の人気を獲得
・米国エリート層のいう人道的な「アメリカの民主主義」への強い反発
・安全保障より経済を重視
米国社会の構造が変わらなければ、今後も「第二のトランプ」、あるいは無駄に過激な言動をしない「スマートなトランプ」が出てくる可能性は高いといわれている。同様にアジアの国際関係の構造が変わらなければ、今後も民主主義が生み出す嫌米のリーダー、「第二のドゥテルテ」や「スマートなドゥテルテ」がアジアに出てくる可能性があるだろう。
「民主主義」さんは、アメリカをお嫌い
アメリカは、民主主義をお好き。しかし、「民主主義」さんは、アメリカをお嫌いだ。アメリカは、世界中に民主主義の価値を説いている。アメリカ人の多くは、利害得失だけでなく、かなり素朴に世界中の人にこの幸せを感じてほしいと思っているようだ。
そのアメリカのソフトパワーの影響を受けてできた、より民主主義的な政権は、もちろん親米的であり、アメリカの外交政策に同調してくれると、アメリカの市民も政権関係者も単純に信じているようにみえる。イラク戦争(2003~11年)の際に、イラクのフセイン大統領を追い出せばイラク民衆が歓喜の声とともにアメリカ軍を迎えると、政権中枢の人でさえ思っていたともいわれる。
民主主義は、正しい。アメリカは、民主主義だ。だから、アメリカの政策は正しい。そう世界中の人が認めるはずだと。
しかし、どこかの国で、より民主主義的で民衆の高い支持が得られた政権ができると、決まって嫌米となる。対米独立路線に向かい、言うことを聞いてくれなくなる。事前のアメリカ人の期待が高いだけに、失望も大きい。