今回、みずほの人事で勝利したのは丸の内、敗れたのは大手町だった。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は3月上旬、傘下のみずほコーポレート銀行(CB)とみずほ銀行(BK)が合併して7月1日に発足する新・みずほ銀行の頭取にFG社長の佐藤康博氏(60、76年日本興業銀行入行)が就任する人事を発表した。佐藤氏が持ち株会社と新しい銀行のトップを兼務するのは大方の予想通り。去就が注目されていたFG会長兼BK頭取の塚本隆史氏(62、74年第一勧業銀行入行)は、代表権は外れるものの新銀行の会長に就く。
佐藤人事の最大のサプライズは、7人いる副社長・副頭取が全員交代することだ。富士銀行出身者が一掃されたことが関心を集めた。BK副頭取の中野武夫氏(56、80年富士銀行入行)は4月1日付で、みずほ信託銀行社長へ転出する。みずほ信託の野中隆史社長(61、75年富士銀入行)は会長になる。
中野氏は財務担当として、みずほグループの資本戦略を担ってきた。富士銀行出身のエースとして次期トップの呼び声が高かった。信託に出されたことで、ポスト佐藤のリストから消えた。
CB副頭取の永濱光弘氏(59、76年富士銀入行)も、みずほ証券の会長に転出する。2度目の大規模なシステム障害で引責辞任したBK頭取の西堀利氏(60、75年富士銀入行)の後を受けてFG副社長になった西澤順一氏(56、80年富士銀入行)も退任する。副社長・副頭取には“粛清の嵐”が吹き荒れたが、富士銀の出身者には、ことのほか厳しかった。中野氏も西澤氏も80年入行の56歳という若さだ。「富士銀ばかりが狙い撃ちされた」との恨み節が聞こえてくる。
「旧3行の背番号を徹底的にはずす」
こう宣言した佐藤氏の意気込みは、役員人事に鮮明に表れた。出身行に関係なく、1976~79年入行組の大半が退任し、80年組を副社長に昇格させた。富士銀の80年組は飛ばしたが、興銀の80年組は引き上げた。
FGの役員人事では4月1日付で、取締役副社長兼副社長執行役員に高橋秀行氏(55、80年興銀入行)と安部大作氏(55、同)が、常務取締役兼常務執行役員から昇格する。2人とも新しい銀行の副頭取執行役員を兼務する。高橋氏は財務・主計グループ長、安部氏はIT・システムグループ長兼事務グループ長で、ともに興銀出身だ。
6月下旬に開催予定のFGの株主総会では常務執行役員の辻田泰徳氏(56、81年富士銀入行)が取締役副社長(代表取締役)兼副社長執行役員に昇格し、新銀行の副頭取執行役員を兼務する。常務執行役員の岡部俊胤氏(56、80年富士銀入行)は取締役副社長兼副社長執行役員に昇格し、新銀行の取締役副頭取(代表取締役)兼副頭取執行役員を兼務する。辻田氏は人事グループ長兼内部監査部門長、岡部氏は個人ユニット・リテールバンキング担当副社長で、ともに富士銀の出身だ。
ポスト佐藤をめぐる「丸の内vs.大手町」のレースは、興銀が高橋氏と安部氏、富士銀は辻田氏と岡部氏の4人に絞られた格好だ。ここでも内幸町の第一勧銀組は蚊帳の外だ。