羽田、新千歳、福岡は順当なところだが、近年、インバウンドが急増している那覇が上位に入っていないのはなぜか。
「那覇も黒字ですが、わずか2億1500万円にとどまっています。国際線旅客ターミナルでの施設使用料やテナント売り上げは順調で、非航空系の数字は55億3300万円の黒字と、羽田、新千歳、福岡に次いで4番目です。その一方、滑走路増設の費用が増加したことで航空系事業が53億円余りの赤字となったため、全体の黒字額が小さくなったのです」(同)
他方、赤字の空港を悪い順に並べると次のようになる。
(1)稚内 ▲6億3800万円
(2)新潟 ▲3億8300万円
(3)釧路 ▲3億600万円
(4)高知 ▲3億200万円
(5)丘珠 ▲2億6100万円
こうしてみると、インバウンドの恩恵が乏しいローカル空港が苦戦している。
富士山静岡空港、経済効果は388億円
県や市など自治体が管理する地方空港は、軒並み苦戦中で赤字のオンパレードである。多くは税金で補てんする状況が続いているが、一方で奮闘中の空港もある。静岡県の富士山静岡空港がそうだ。同空港は世界遺産の富士山の麓に09年に開業したローカル空港で、開港当時は滑走路近くの立ち木の問題でトラブルが起き、開業後の苦戦がささやかれた。県が管理し、空港運営は民間企業の富士山静岡空港株式会社が行っている。
そんなローカル空港が大化けした。現在、就航する国内線は札幌、福岡、鹿児島、那覇の4路線。国際線は韓国、台湾、中国向けの路線があり、エアソウル、中国東方航空などが乗り入れている。16年度の着陸回数は国内線・国際線合計で4939回。前年度の3793回に比べて3割増えた。搭乗者数も杭州線、南京線など新規就航路線が増えたことで69万8652人(国内線・国際線合計)と、こちらも前年度比27%の大幅増となった。
減価償却など企業会計の考え方を取り入れた経常損益は16億9355万円の赤字となったが、EBITDAで見ると県は5億900万円の赤字、富士山静岡空港は5億9700万円の黒字である。合算すると8800万円の黒字となった。前年度は2億1000万円の赤字だったから黒字転換したことになる。16年12月に川勝平太静岡県知事が、静岡富士山空港の静岡県内経済への波及効果は388億1000万円だったとの推計を明らかにした。