EV開発のトップは豊田章男社長
20年までにEVの量産体制を整えると発表したトヨタは、16年11月に入るとそのために社内ベンチャーを立ち上げると発表した。しかし、なぜベンチャーなのか。
トヨタは豊田章男氏が社長に就任して以降、体制の改革を進めてきた。とくにこの数年は将来に向けて体制を強化すると、ダイハツの完全子会社化や新興国向けの小型車開発会社の設立、そして人工知能技術の研究・開発を行う新会社TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.の設立も急いできた。EVの社内ベンチャーもまた、迅速な車両開発を狙ってのことだと考えられる。
それは開発のトップが豊田社長その人という人事から想像可能だ。EVの開発は社長直轄なのである。
だが、EVの社内ベンチャーの人事を見ると、疑問を感じる点がある。全4人の社員は、豊田自動織機、アイシン精機、デンソーから各1人ずつと、トヨタから1人である。トヨタ色がきわめて薄いのだ。
トヨタの1人は、プリウス/プリウスPHVのチーフエンジニアである豊島浩二氏である。電気動力車の開発のベテランであり、これは適任だ。社外が3人、社内が1人の4人でトヨタの命運を握るかもしれない重要な役目を負った車両であるEVを開発する。
幹部が開発をサポートする
EV開発の陣容はこうだ。トップに豊田社長、正確にいうと「EV事業企画室(統括)」である。その下に技術トップの加藤光久副社長。同じく企画室の統括である。そして寺師茂樹副社長(統括)、小西工己常務と続く。
豊島氏はEV事業企画室の室長となり、この下にグループ企業の3人が入る。実際に開発するのは、この4人だ。ただし、後ろには豊田社長以下、そうそうたるメンバーが並んでいる。他部署や上役たちは、まったく手出しはできない。
これほどまでの強固な開発体制は、数あるトヨタの開発組織の中で飛びぬけている。逆にいえば、トヨタでEVを開発するのは、きわめて難事業だということにほかならない。
存在を賭けた反対闘争
これほどまでに開発体制を強固な組織にしたのは、EVには根強くしかも大きな反対派が社内に存在するからである。そうしたEV反対派から開発組織を守る必要があるからだ。