飽和する「記念日」…年間2800種類、企業は売上拡大のため「記念日づくり」競争
記念日定着で企業、業界が活性化
定着したときの費用対効果を考えれば、比較的安価な投資といえる記念日申請。企業からしてみれば「とりあえず」の感覚で申請できるのだろう。実際に、日本記念日協会には企業やPRに携わる関係者からの相談が増え続けているという。では、記念日定着による具体的なマーケティング効果とはどのようなものがあるのだろうか。
「企業が記念日を制定すれば、継続的にイベントやキャンペーンをするタイミングを得ることになります。つまり、消費者に毎年一回は必ず商品の想起を促せるということです。消費者だけではなく、企業も記念日に向けてのキャンペーンを毎年展開できますから、事業目標を立てやすく、担当者のモチベーションをあげることにも繋げやすくなります。さらに、バレンタインデーのように広く一般社会に浸透して定着すれば、その効果は他社も含めた業界全体の刺激になります。このように、記念日マーケティングは企業や業界の活性化策として有効な戦略となるのです」(同)
だが、前述の通り年間の記念日は2800種類以上もあり、その中で世間に定着したものは決して多くはない。記念日も飽和状態にあるということだ。
「もちろん、記念日を制定したからといって、必ずしも売上げに直結するわけではありません。企業独自のプロモーション戦略で、消費者に覚えてもらう努力が必要です。しかし、それは簡単なことではありません。特に、業界や一般に定着できるかどうかは、担当者が継続的に力を入れて地道に広報活動を積み上げていけるかどうかにかかっていると思います」(同)
ハロウィンが今のような形で定着するきっかけとなったひとつに「KAWASAKI Halloween(川崎ハロウィン)」があるといわれているが、同イベントの初開催時はパレードの参加者が150人程度の規模だったという。しかし、毎年地道に続けていった結果、現在はギャラリーを含めると12万人以上を集める大型イベントとなった。このイベントからもわかる通り、何かが世の中に定着するまでには相応の期間を要する。これは企業の成長に似たものがあるのではないだろうか。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)