【戦術2 有名選手に無償提供、他の選手には有償販売】
今回のWBCで優勝候補筆頭といわれるのが、前回の覇者であるドミニカ共和国だ。米大リーグで活躍するロビンソン・カノ、ネルソン・クルーズ両選手(ともにシアトル・マリナーズ所属)などスーパースターを揃え、前評判が高い。実は両選手ともベルガードの防具を愛用している。ほかの選手から評判を聞いて、同社に依頼してきたという。
「大リーグのシーズン用を使っていたカノ選手とクルーズ選手から先月、ドミニカ代表用の防具も依頼され、WBC特別仕様の防具として納品しました」(永井氏)
このようにベルガード製品を愛用するスーパースターも増えているが、同社の有名選手との付き合い方は、大手メーカーとは一線を画している。
たとえば、前回大会のMVP(最高殊勲選手)で、大リーグ通算12年で2210安打・278本塁打・通算打率3割7厘のカノ選手クラスになると、大手メーカーが巨額の契約金で専属契約を結び、用具の無償提供も含めて広告塔とするのが一般的だ。一流選手は、グローブ、バット、トレーニングウェア、防具など、それぞれ別のメーカーと契約を結ぶことも多い。
だが大手とは異なり、有名選手に契約金を支払わない同社では、用具の無償提供のみを行う。それでも選手本人が納得して使い、気に入ると追加で製作依頼が来る。さらに、ほかの大リーガーからの依頼もある。こうして知名度や評価が高まると、マイナーリーグの選手やアマチュア選手からの注文が増え、有料での販売個数が拡大するというビジネスモデルだ。
ちなみに日本のプロ野球では、大手メーカーと契約する日本選手が、それ以外のメーカー商品を使うのは難しい。以前、首位打者も獲得したある日本人選手が同社の防具に興味を持ち、依頼を受けて道具を提供したことがあるが、専属契約がカベとなり同選手はその防具を試合で使えなかった。そのため、国内でもエルネスト・メヒア選手(埼玉西武ライオンズ)、ダヤン・ビシエド選手(中日ドラゴンズ)など、外国人選手が使うことが多い。
「最近はインスタグラムでも発信し、大リーガー本人や代理人からの依頼が増えたので、より外国人向けに注力したいと思います」(同)