想像を絶する名将・日ハム栗山監督の真実…選手にひたすら「尽くす」卓越した手法
栗山監督のプレイヤー・ファースト
日本代表の小久保ジャパンが予想以上の快進撃を見せ、盛り上がりを見せたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の余韻も冷めやらぬなか、今年もプロ野球の長いシーズンが開幕した。
昨年、最大11.5ゲーム差をつけられてからの奇跡の逆転劇を起こした北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督が、球団史上初となる2年連続日本一を実現できるか、また今年も大谷翔平選手の二刀流での起用法をはじめ、どのような采配を振るかが注目される。
栗山監督といえば、大谷の「1番・投手」での二刀流起用や、守護神である増井浩俊投手のシーズン途中からの先発転向など、これまでのプロ野球の常識を覆す大胆な起用法を繰り出す名将といったイメージが強い。しかしそれ以上に着目すべきは、新しいリーダーシップのあり方だ。栗山監督のリーダーシップは、プロ野球の世界にとどまらず、成果責任を厳しく問われるようになってきたビジネスの世界にとっても良き手本となるものだ。
その栗山監督らしいリーダーシップの哲学は、昨年のリーグ優勝や日本一に輝いたときの優勝監督インタビューの場でも端的に表れている。
「ここまでがんばってきた選手たちが勝ちたくて勝ちたくて、ものすごく緊張しているのがこっちにも伝わってきました。とにかく、なんでもいいから早く勝たせてあげたいと思って見ていましたが、本当に良くやってくれました。」(16年9月28日・リーグ優勝)
「選手たちはリーグ優勝のときも言いましたが、苦しいシーズンから最後大きく離されながらも諦めない。1試合ごとに選手たちが成長している姿を実感できたので、選手たちをほめてあげてください」(同年10月29日・日本シリーズ優勝)
このように栗山監督は日本ハムの監督に就任して以来、ぶれることなく、選手第一(プレイヤー・ファースト)で考え、選手を主役にし、監督はそれを支える裏方・サポーターという役に徹している。
このプレイヤー・ファーストの思想は、決してインタビューのときだけのリップ・サービスではない。普段から相当な部分を選手に任せており、監督として言いたいことがあっても、できるだけ我慢して言わないようにしている。監督を支えているコーチに対しても、「チームのことはどうでもいいから、選手のためになるかならないかを判断基準にアドバイスをしよう」と伝えている。これは通常とは真逆の発想だ。監督の場合、どんなに選手が活躍したとしても、チームとしての結果を出せなければ解雇されてしまう。それでも栗山監督は、「勝ったら選手のおかげ、負けたら全部、俺のせいだから」(「週刊ベースボール」<ベースボールマガジン社/12年11月4日臨時増刊号>より)というように、選手を信じて覚悟を決めている。