株価で分かるTPPの脅威 国内の農林水産物生産額が3兆円マイナス 農業関連銘柄も軒並みダウン!?
農業関連株が一気に、フィーバーしたのは2月26日。安倍晋三首相が日本経済再生本部の会合で、TPP交渉参加をにらんで農業水産業の強化策を指示したのがきっかけだった。
農機や種子、飼料などに買い物が入った。3月15日に安倍首相がTPPへの日本の交渉参加を正式に表明するまでの期間、農業関連銘柄の狂騒曲が奏でられた。
主役は農機である。農地の集約により農家の事業規模が大きくなれば、従来よりも大型の農機の需要が高まる。頭打ちの国内農機市場にはまたとない商機だ。
最初に動き出したのはトラクターやコンバイン、田植機で強みを発揮する井関農機。株価は急騰。3月14日には昨年来の高値の374円をつけ、同安値の164円(12年1月12日)から2.3倍に上昇した。
大型トラクターなど農機大手のクボタの市場の人気は低位の井関農機の後塵を拝していたが、TPP交渉参加表明が迫ってくるにつれて出来高が増加した。3月15日には1324円と2006年5月以来の高値をつけた。その後も騰勢は衰えず3月27日には1390円と1989年4月6日以来、24年ぶりの高値に並んだ。昨年来安値の626円(12年1月6日)の2.2倍。クボタはTPP・農業関連株の主役との見方がある。
クボタが上場来の高値をつけた89年4月はバブル景気の真っ只中。コンピューター関連事業も手掛け、経営多角化を進めていた。だが、その後は農機などへ経営資源を集中した。
刈払機、噴霧機の丸山製作所は2月26日に375円をつけ昨年来高値をつけ、株価はリーマン・ショック前の水準まで回復した。同安値の137円(12年6月4日)の2.7倍に大化けした。丸山製作所は仕手株の要素もあり、弾みがついた。
野村證券はTPP交渉参加への流れが固まった2月25日、「円安以外の、待望の株価上昇要因が登場した」として、年末の日経平均株価の予想を2000円引き上げ1万4500円とした。
2月26日、安倍首相は輸入農産物との競争が激しくなる農業の強化策を指示した。国内での農業改革のスピードが上がりビジネスの機会が拡大するとの期待から農業関連銘柄が大フィーバーしたのである。
安倍首相が農業強化策を指示した2月26日からTPP交渉参加を表明した3月15日の間に、TPP・農業関連銘柄の銘柄はどのくらい上昇、もしくは下落したかをみてみよう。4月3日の終値もフォローした。
【TPP・農業関連銘柄の株価上昇・下落率】
クボタ 農機 1102 1314 19.2 1269 15.1
井関農機 農機 348 356 2.3 305 ▲12.4
丸山製作所 農機 344 280 ▲18.6 262 ▲23.8
日本配合飼料 飼料 154 140 ▲9.1 118 ▲23.4
協同飼料 飼料 128 130 1.6 112 ▲12.5
日本農薬 農薬 603 621 3.0 623 3.3
サカタのタネ 種苗 1223 1260 3.0 1209 ▲1.1
カネコ種苗 種苗 803 793 ▲1.2 781 ▲2.7
ヤマタネ 米穀卸 191 216 13.1 184 ▲3.7
※終値ベース、▲はマイナス