マスコミ報道はコメ問題に終始!? TPP参加に立ちはだかる難題の山 知的財産や保険も不安…
国論を二分するテーマとなっているTPP(環太平洋経済連携協定)参加問題。安倍晋三首相は明日にもTPP交渉参加を正式表明することになった。その舞台裏や是非について、各メディアが一面トップで扱っている。
交渉参加に先立ち、これまでTPP参加に慎重な意見の多かった自民党が、条件付きで参加を認める党決議を行った。読売新聞によれば、この会議には100人余りの国会議員が出席。コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物(サトウキビなど)の5品目と、国民間保険制度について「聖域(死活的利益)の確保を最優先とし、確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」と明記した。「脱退も辞さない」という強い文面については、慎重派議員からの強い要望で付け加えられたという。
この自民党決議に対し、日本維新の会の橋下徹共同代表は、「自民党は政府に条件をつけすぎだ」「自民党政権下ではTPP不参加となるのではないか」との批判的なコメントを発表した(朝日新聞)。
支持率70%超を背景とした安倍政権のTPP交渉参加方針を自民党も追認した形だが、同党が求める「コメの聖域化」の実現は厳しい、との記事も出ている。東京新聞は、TPPをめぐる日米両政府の事前協議で、コメを始めとする農産品の輸入にかける税金(関税)の維持についてはこれまで議論されておらず、今後も取り上げない見通しであると報じている。
東京新聞によると、今回の事前協議では、米側の求める自動車関税の譲歩について主に議論されている。これは、日本のTPP交渉参加入りにあたって「事前協議が対日強硬派の多い米議会を説得するための材料を引き出す場になっている」ことが大きいという。しかし、このままでは9月にも予定されている日本初参加のTPP交渉で、コメ協議を「ぶっつけ本番」で行うこととなる。同紙は、米側の黙認なしでのコメ聖域化実現を疑問視する立場だ。
一方、各国のTPP交渉自体が暗礁に乗り掛けている、との見方もある。朝日新聞によれば、米国やオーストラリアなど11カ国が16回目の交渉会合を終えたが、関税撤廃分野の選定で対立が収まらないという。20分野以上ある対象分野で意見がまとまったのは2分野だけであり、とりわけ農産物の関税撤廃や、国有企業の優遇措置の撤廃などで意見が激しく対立している模様だ。同紙は、交渉担当者の「話し合いが年内にまとまる可能性は五分五分」との声を紹介している。
また、各国首脳の間では、日本のTPP交渉入りをけん制する動きもある。日本経済新聞は、TPP交渉参加国であるチリ・ピニェラ大統領が、例外品目の扱いについて「ごくごく一部の例外でなければならない」と表明したことに触れ、日本の交渉参加後も多くの課題があることを示唆している。