その例として挙げられるのが、20年にオープン予定の「美女と野獣エリア(仮称)」だ。投資額はTDL、TDS開園以来最大規模の750億円を見込んでいるが、この大事業に山本氏は首をかしげる。
「投資額的にはTDL、TDSに続く3つめのパークとなり得る規模ですが、ハリーポッターのようにシリーズ化されているわけでもなければ、『アナと雪の女王』のように近年話題をつくったわけでもない、単発映画の『美女と野獣』が、ひとつのパークを担えるほどのコンテンツなのでしょうか。そういう面でも、TDRの施策にピントのズレを感じます」
夢の世界をぶち壊した企業広告の功罪
また、TDRを運営しているオリエンタルランドと、本体の米ディズニーの関係性も、人気に陰りを落とす要因だと山本氏は指摘する。
「世界のディズニーランドと違って、オリエンタルランドは本社のディズニーと資本提携も人的交流もありません。しかし、オリエンタルランドは上場企業なので、利益を出さなくてはなりません。そのため、レストランなどの料金も非常に高額になっているのですが、富士山の五合目でもないのに、そんな価格設定でお客さんは納得できませんよね。また、アトラクションなどを新規開発するにしても、スポンサーにたくさん資金を出してもらわなければならないので、世界観をぶち壊してしまう広告看板が敷地中に散見されるようになっています」
これも、オリエンタルランドとディズニーの特異な関係性がもたらす弊害だという。
「海外のディズニーは、日本に比べると広告看板の数はかなり少ないです。USJも企業広告は多いですが、コンテンツがごちゃ混ぜのテーマパークなので、あまり気になりません。ディズニーの世界観を守るために、せっかく敷地の外が見えないように工夫した設計をしているのに、企業の看板が氾濫していると一気に現実に戻されてしまいます。今に始まったことではありませんが、それも来場者の夢を少しずつ醒ましてしまった要因かもしれません」
おそらく、20年オープンの「美女と野獣エリア(仮称)」も、広告看板だらけになるだろう。好調が続くUSJの追随を突き放すことができるのか、両者の動きから目が離せない。
(文=編集部)