家で簡単につくれる「究極のハイボール」…お金も時間もかけた探求の末にたどりついた答え
スカイ島には、大木などはほとんど生えない。岩だらけの表面にうっすらとピート(泥炭)層がつき、その上を背の低い植物が申し訳程度に覆っているだけだ。スカイ島はその昔、北欧からやってきたバイキングに発見された。タリスカーの語源も古代ノルド語(バイキングの言葉)の「タリスゲア(TALIS GAIR:傾いた岩)」に由来している。タリスカー蒸留所から5マイルの場所にある、海に突き出した大きな岩のことだ。きっとバイキングたちにとって、灯台のごとく重要なランドマークになっていたのだろう。
そして、その岩が突き出すタリスカー湾は冬ともなると激しいストームの来襲を受ける。タリスカー蒸留所の目の前には荒れ狂う海があり、貯蔵庫は一年中冷たく激しい潮風に晒される。そのなかでタリスカー蒸留所の樽たちは、潮風が扉を叩く音を子守唄にして眠り続ける(参考:『バーカウンターは人生の勉強机である』<島地勝彦/CCCメディアハウス>より)
「天使の分け前」
ワインの場合、ラベルに印される年号は、原料となったぶどうの収穫年を示す。ヴィンテージ・ワインとは、当たり年といわれる出来のよいワインのことである。一方で、ウイスキーのラベルに印される「10年」「18年」「30年」という年度は、貯蔵期間。どれだけ寝かせてきたかという熟成度を示す。
「天使の分け前」という言葉をご存じだろうか。「樽」の中で何年も熟成される間に、ウイスキー(水分とアルコール分)は1年で数%ずつ蒸発していく。まるで、誰か(天使)がこっそり飲んでいるかのように、薄暗い貯蔵庫の中で蒸発して消えていったウイスキーのことをそう呼ぶのである。
以前、ウイスキー工場で10年、20年、30年と時間の経過とともに、樽の中身がいかに減っていくのかを展示したサンプルを見たことがあるが、30年以上経過すると、その量は醸造開始時の半分以下になっているように見えた。
静かに育てられ、鍛えられたウイスキーが私は好きだ。6年前に「サロン ド シマジ」で偉大な人生の先輩お二人と飲んだタリスカーのスパイシーハイボールは、私の宝になり、以来、大事な一日を締めくくるのはこの一杯となったのである。ここ数年の自分の近況をまた、お二人に聞いてもらいたい。そして、またあのバーカウンターで、熟成された先人たちの話も聞いてみたいものである。
さて、上の写真は新宿伊勢丹メンズ館の8階にあるサロン ド シマジである。本物のプライベート・バーの雰囲気を模した「島地勝彦セレクトコーナー」である。ここには、島地さんがプロデュースした洋服や時計、またお気に入りのパイプやアクセサリーなどが展示・販売されている。いわずもがな、お酒も取り扱っており、「タリスカーのスパイシーハイボール」セット(1万5,000円税別)が入手可能だ。ぜひ、ご賞味あれ。
(文=山田まさる/インテグレートCOO、コムデックス代表取締役社長)
現在、「タリスカー スパイシーハイボール」のキャンペーン実施中(6月30日まで)