武田薬品工業…相談役・顧問の廃止の株主提案
武田薬品工業は6月28日、大阪市浪速区の大阪府立体育館で第141回定期株主総会を開く。注目は株主15人による株主提案が議案になっていることだ。
株主提案は、相談役・顧問の役職廃止を訴えている。「元最高責任者の相談役や顧問(就任)は経営面で強い影響力を持つ」として、相談役らの原則廃止を定款に盛り込むように求めている。
さらに、長谷川閑史取締役会長の経営責任を明確にするため、解任を提案している。その理由は以下の4点だ。
(1)直近のROE(自己資本利益率)平均は3.0%、ISS(議決権行使助言会社)による基準値の5%ならびに政府推奨値の8%を下回っているにもかかわらず、抜本的な改善がなされていない。
(2)約1兆1800億円でナイコメッド(スイスの製薬会社)を買収した成果が検証されていない。買収後の5年間の製品に係わる減損損失1700億円について株主への充分な説明がなされていない。
(3)ブロプレス誇大報告問題での責任が明確に取られておらず、会社イメージの毀損は深刻である。誇大広告問題とは、降圧剤のブロプレスで臨床研究のデータを不適切に使った誇大広告が行われたことだ。2015年6月、厚生労働省から初の行政処分を受けた。
(4)社内での経営幹部の教育と登用が十分になされておらず、高額な外部リクルートに頼らざるを得なくなっている
会社側はこれらの提案に反対を表明している。
武田薬品は長谷川氏が総会後に会長を退任し、相談役になる人事を4月に発表したが、株主はこれに反対しているのだ。株主提案を受けて会社側は、長谷川氏の年間報酬は現在の12%ほどにとどまることや、経済同友会など外郭団体の役職を任期満了まで務める必要性を挙げ、相談役就任について株主に理解を求めた。
しかし、長谷川氏の役員報酬は15年3月期の2億7700万円から16年同期は4億5000万円に急増している。「年間報酬は12%ほど」としているが、5400万円だ。決して少ない金額とはいえず、説得力に欠ける。
東芝は、社長経験者が相談役や顧問に退いた後も首脳人事に介入したことによってガバナンス(統治能力)が欠如し、会社解体に追い込まれたとの指摘がある。相談役・顧問を廃止する株主提案にどの程度の賛成票が集まるか注目される。