が行われている。
5月22日付の読売新聞は「半導体ルネサス6000人削減、500億円増資」と報じた。社員の約15%に相当する大規模リストラであることに加え、エルピーダメモリの破たんが2月にあったこともあり、一面トップでの扱いとなった。増資の引受先は明らかにしていなかったが、ルネサスの出資構成を考えれば日立、三菱電機(以下、三菱)、NECの3社であることは業界関係者ならば一目瞭然だった。
読売「6000人削減」記事の出元探しに奔走する日立
アナリストは「日経ではなく、読売が報じている点から、ルネサスのリークではないとみられるとともに、何か意図的なモノを感じた」と振り返る。そもそも、後でわかることだが、この6000人という数字はリストラ計画のたたき台。5月26日には1万人超と各社が一斉に報じたように、まだ計画策定段階だったのだ。生煮えで漏れただけに、ルネサスや大株主・日立の広報部は「ニュースの出所はどこだ?」と顔色を変え、犯人探しに奔走したという。
金融筋の間では「ネタ元は三菱東京UFJ銀行(以下、三菱U)で間違いない」とみる向きが多い。ルネサスのメーンバンクは三菱U、みずほ、三井住友の3行だが、ある都銀幹部は次のように内情を解説する。
「みずほは自行内に諸々の問題を抱え、三井住友はNECやマツダなどルネサス以上の難題融資先を抱える。他2行が動けない中、三菱Uは赤字体質で問題児のルネサスを持て余している、といっていい。なんとかルネサス問題にメドをつけたがっている」
定石通りだとすれば、記者の夜回りなどを受けた際に積極的に話し、その内容を書かせることで、まず既成事実化する。最初に世論を動かしておいて、どうにか状況を打破させたいと考えるわけだ。実際、読売が報じた翌日には朝日が「(リストラ案を)銀行団に提示した」と後追いをしたが、これもネタ元は三菱Uの線が濃厚だという。
5月26日には前述の通り、人員削減計画を1万人超にまで拡大したとのニュースが飛び出したが、これを一番先に報じたのは米通信社・ブルームバーグ。経済誌記者は「記者の名前がクレジットされていたが、この人は半導体担当ではなかった。ルネサスから計画案を聞いた関係者の話として書かれているが、これも出元は三菱Uでは?」とみているという。
引き金は、三菱社長から突然飛び出た発言
そもそも、この報道の引き金になったのも、三菱グループ経営幹部の発言だった。5月21日、三菱の経営方針説明会で山西健一郎社長が「(ルネサスに対して)責任がある」と語り、周囲を驚かせた。出資要請があれば、同じく大株主の日立、NECと共に対応を検討していくとの趣旨の発言をした。これまで一貫して追加出資を否定していたことを考えると180度態度を変えたわけだが、同じ三菱グループの中軸である三菱Uからの突き上げがあったと考えれば、発言の変化も合点がいく。