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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第9回 浜田宏氏(アルヒ代表取締役会長兼社長)

住宅ローン申請の膨大な手間も軽減…家を買うプロセス全部を「ラクにする」企業が話題

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
住宅ローン申請の膨大な手間も軽減…家を買うプロセス全部を「ラクにする」企業が話題の画像1浜田 宏(はまだ・ひろし):アルヒ会長兼社長 CEO兼COO。1959年東京都生まれ。82年早稲田大学卒業。山下新日本汽船(現商船三井)入社。AIGグループアリコジャパン(現メットライフ生命保険)を経て、91年米サンダーバード国際経営大学院国際経営学修士課程修了。米クラーク・コンサルティング・グループに入社し、在籍中の93年に米デルの日本法人立ち上げに参画。95年デルコンピュータ(現デル)、00年デル日本法人の社長兼米本社副社長。06年リヴァンプ代表パートナー。08年HOYA執行役最高執行責任者などを経て、15年1月にSBIモーゲージ(現アルヒ)顧問、5月アルヒ会長兼CEO。9月から現職。

 世界的な金融自由化の流れのなかで、国内金融機関に一石を投じる企業がある。2001年に日本初のモーゲージバンク(証券化を資金調達手段とする住宅ローン貸出専門の金融機関)として設立された、アルヒ(旧SBIモーゲージ)である。

 アルヒは、「フィンテック」と「不動産テック」の融合に挑戦している。また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション/ソフトウェアロボット)をはじめとするIT導入により事務の自動化、効率化を図って、業績の拡大を目指しているのだ。

「フィンテック」とは、金融業においてITやAI(人工知能)、ロボティクスなどの新技術を導入する試みだ。スマートフォンで個人間送金を行うアプリや、インターネットバンキングなどはその一例だ。待ち時間はなく、手数料も安いなどユーザーの利便性は高いが、一方、国内企業での導入は、欧米に比べて周回遅れといわれている。

 フィンテックと不動産テックの可能性は、どこにあるのか。アルヒ会長兼社長の浜田宏氏に聞いた。

フィンテックと不動産テックの融合

片山修(以下、片山) アルヒはフィンテックと不動産テックの融合を試み、業務へのAI導入も進めています。RPA(ソフトウェアロボット)やOCR(光学的文字認識)技術の導入によって、書類の記入事項は、従来の200項目から100項目ほどにまで減ったと聞きます。これらの導入には、やはり時間がかかりましたか。

浜田宏氏(以下、浜田) やると決めて、3、4カ月後にはスタートしました。もっとも、現在まだ4割くらいしかできていない。RPAはベンチャー企業がいくつかあったので、協力しながら進めました。技術は日進月歩です。たとえば、国立科学博物館などが古文書の自動読み取りを研究したりしていて、いずれは殴り書きした手書きの古文書なども、AIによって活字に起こせる時代がやってくると聞いています。そのスピードは想像以上に早い。

片山 ここ1、2年、国内においてもフィンテックが注目を集め始めました。いったい、どこまで進化していくのでしょうか。

浜田 たとえば、アルヒのLINEチャットで「世田谷区、新築マンション、2LDK、5000万円くらい」と打ち込めば、結果がすぐに出てきます。今後、たとえばあらかじめ年収などのデータを入力してあれば、スマホの音声認識を使って話しかけるだけで、「あなたが買えそうな物件は○○」「あなたにお薦めのローンは××」「毎月の支払額は△△円」などの情報がすべて、一瞬で見られるようにしたい。

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 それから、たとえば運転免許証の写真を撮って送るだけで、お金をお貸しできるかどうかの簡易診断のほか、年収や探している物件の情報を入力したら、物件、ローンの組み方、現在の家賃との比較など、いろんな情報を提示できるとか、とにかく便利にしたいですね。

片山 ウェブの使い方に関しては、浜田さんはもともと専門ですから、発想が違いますよね。

浜田 20年前のインターネット黎明期から、その分野で仕事をしていますからね。

片山 AIが、自分のマンションの査定、物件紹介、ローンの提案まで全部してくれて、審査も自動になればいいですね。

浜田 そこまでいきたいですね。まだ道のりは長いですけど。

片山 あと1、2年でそうなりますかね。

浜田 お金と人をかければ実現できるでしょう。現在のペースなら、1年後にはかなりのところまでいくんじゃないですか。

門外漢だからできる改革

片山 浜田さんは、アルヒで従来の金融機関の枠をはみ出すようなことに挑戦を続けていらっしゃいます。なぜ、リスクテイクして新しい挑戦ができるんですか。

浜田 私は金融マンじゃありませんからね。

片山 なるほど。グローバルなハイテク業界から、超ドメスティックな金融業界にきてみて、いかがですか。

浜田 IT企業の感覚でこの業界に入ると、その違いに驚きましたね。金融業界は、一般論として日銀、メガバンク、地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合、その下にノンバンクという“序列”が残っているといわれています。

片山 金融業界は、いまだに過当競争を避けようとする「右に倣え」の世界ですからね。

浜田 ハイテクの世界の凄まじさに比べたら、「どうなんだろう」と感じることが多々あったのも事実です。関係省庁とのコミュニケーションもしっかり取る必要がありますし。

片山 おっしゃる通りです。

浜田 当時はこの会社も、「われわれは金融機関です」といって、18時には電話を切って、土日は仕事をしなかった。「君たち、何を言ってんの」と言いましたよ。われわれは、お客さまが一生に一度か二度の家を買うために、数千万円のお金を用立てする、そのお手伝いをしているんです。お客さまが家を見にいくのは、たいてい土日でしょう。お客さまは、書類を取りに平日昼間に何度も役所や金融機関に足を運ぶことはできないわけですよ。動けるのは、週末と夜だけ。そういった発想すらなかった。

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片山 顧客目線が欠如していたわけですね。

浜田 そもそも、住宅ローンの会社は威張るもんじゃない。お客さまは住宅ローンが欲しいのではなく、家が欲しいんですよ。だったら、家を買うプロセス全部をもっと簡単にラクにする会社になろう、そんな会社は日本に一つもないんだから、と話しました。

片山 金融も不動産も関係ないということですね。

浜田 われわれはノンバンクで、比較的、規制に縛られない。家を買うプロセスすべてのお手伝いをする日本、いや世界で唯一の会社になろうと思った。その一念で、私はこの会社にきたんですから。具体的にいうと、家を探す、住宅ローンをお貸しする、家を買った後のサービス、それらをできるだけ簡単に提供できる仕組みをつくろうと考えた。必然的に、テクノロジーを導入せざるを得ないわけです。

片山 その点、IT企業出身だから、ITの活用の仕方には“土地勘”があるわけですね。

浜田 そうです。僕自身の経験からいっても、住宅ローンを借りる際、分厚い書類の束を渡されて、何回も名前や住所を書いて、ちょっと間違えたら訂正印を押す経験をした。これをどうにかできないだろうか、と考えましたよ。

 近年は、スマートフォンで運転免許証やマイナンバーカードの写真を撮って送れば、投信のAIによる自動運用などに簡単に登録できます。自分でそれをやってみて、これぞ庶民のためのフィンテックだと思った。

 住宅ローンも、これくらい簡単にしたい。ITやRPAの活用によって、スマホで書類を撮って送れば、自動的に申込書ができ、自動で審査できるようにしたい。お客さまや不動産屋さんに分厚い書類を書いていただいたり、ひたすらデータを打ち込むといった仕事は、なくせますよ。

片山 ただ、それをいうと、すぐ「仕事がなくなる」と批判的な声が上がりますよね。

浜田 雇用がなくなるわけではありません。誰でもできる作業、単純なのにミスしたら文句を言われる作業など、ストレスのかかる非人間的な作業は、機械がやればいいということです。そうなれば、うちの社員はより高度な仕事に移り、事務作業は速く、簡単かつミスがなくなる。産業革命によって、炭鉱員や人力車などの肉体労働が減り、知的生産性の高い職業に移行したのと同じことです。

 たとえば、単純作業がなくなった分は、うちの営業部員は外に出て、今まで以上に不動産業者の相談に乗ってあげられる。不動産業者は事務作業が減れば、お客さまにもっといろいろな物件を紹介してあげられる。つまり、フェイス・トゥ・フェイスの時間が増える。お客さまも、不動産業者も、我々もラクになるんです。もっとも、こんなことは、IT業界では常識だろうと思います。門外漢だからこそ、当たり前のことに気づけるんです。

住宅金融のアマゾンになる

片山 では、アルヒの課題、あるいはまだ足りないと考えている部分は、どこですか。

浜田 商品をさらに増やしたいですね。現在の2倍くらいにできると思っています。固定金利の「フラット35」だけでなく、ネット銀行さんと提携して変動金利の商品も扱い始めましたし、投資マンション用ローン、リフォームローンなど、いろいろ商品をつくっています。

片山 女性専用の住宅ローンもやっていらっしゃいますよね。

浜田 やってみたんですが、家を買うのに性別はあまり関係ないですね。ただ、女性が一人でマンションを買うときには不安が多いので、一人暮らしでも安心な物件を多く持っている不動産屋さんのリストなどはあっていいかもしれません。

片山 独身女性にとって、終身家を借りて住むのか、思い切って家を買うのかは、悩ましい問題ですよね。

浜田 買うというのであれば、一つ言えることは、駅近なら買ったほうがいい。歩いて7分以内です。将来結婚して引っ越すとしても、いざとなったら売れるし、貸せますからね。家族でその土地に根付いて、売る気がないなら好きなところを選んで買えばいい。自分の人生、転職も多いだろう、結婚も離婚もするかもしれない、気ままに生きたいと思えば賃貸がいい。

片山 なるほど。必ずこうという答えはないですよね。では、商品を増やす際のポイントはありますか。

浜田 固定金利、変動金利とも、キーワードは一つ。うちで扱うのは「日本で最も競争力がある」商品。中途半端なことはやらない。

片山 でも、どうしてそんなことができるんですか。

浜田 通常、日本一低い変動金利を提供できる金融機関は、ネット銀行です。アルヒは現在、住信SBIネット銀行さんとソニー銀行さんの商品を取り扱っています。ネット銀行の住宅ローンは増加傾向にありますが、一方で大きなおカネが動き、細かい書類も多く必要なので、対面の方が安心というお客さまが多いのも事実です。そこで、ネット銀行がアルヒの店舗網を使うことで、彼らの商品を対面で売れるわけです。

 彼らが、アルヒに売らせてくれるのは、ブランド力と販売力があるからだと思います。住宅金融支援機構も銀行もわれわれを信頼し、保証してくださる。

片山 販売チャネルが多いことも大きいですね。

浜田 商品を増やせるのは、販売チャネルがたくさんあるからですね。フランチャイズ店、直営店、ネットや法人営業部があり、しかもバックオフィスは、ハイテクを利用して、商品が増えてもこなせる体制が整っている。つまり、ブランド力、営業力、信用力、規模、IT処理ができているから、商品を増やせるということですよ。

片山 不動産業者からすると、アルヒと付き合うメリットはなんですか。

浜田 不動産業者とは、全国の6万強の事業者中4割強、二十数万人の営業マンの約4割とすでにお付き合いがあります。われわれは、不動産業者とお客さまをつなぐ「場」です。われわれのところにきた不動産業者はチャネルが揃うし、住宅ローンを借りる人は、商品がたくさんあるからみんなが喜ぶ。目指すは、住宅金融のアマゾンのようなマーケットプレイスです。

発想は“アルヒ版コストコ”

片山 アルヒは住宅ローンの会社と思っていたら、いまや、ネットを使った家の検索に始まり、ローンを組んで払い終わるまでの長期にわたってさまざまなサービスを提供する、新しいビジネスモデルを構築している。こんな会社は、ほかに例がありませんよね。

浜田 そうですね。

片山 とくに、アルヒでローンを契約した顧客に提供する「ARUHI暮らしのサービス」がおもしろい。引っ越し業者、家電量販店、トランクルーム、ベビー用品レンタル、古本店、カーシェアなど、住居や生活に絡むさまざまな企業と提携して、アルヒの顧客が割安でサービスを受けられる仕組みをつくっています。この発想は、どこからきたんですか。

浜田 いわば、“アルヒ版コストコ”をつくろうと考えたんですね。というのは、戸建ての家を購入すると、引っ越し代に加え、絨毯、カーテン、どうせなら冷蔵庫も新調したい、垣根がほしい……と、住宅購入費以外に最低150万円かかるといわれます。僕自身、若い頃に家を建てたとき、カネが尽きて、エアコンを一部屋入れられず、夏は暑くてその部屋に入れなかった(笑)。

片山 それは本当ですか。

浜田 ええ。中古マンションでも、トイレを替えたり、たばこのヤニが気になって壁紙を替えるなど、100万円はかかるといわれます。そのうえ、引っ越すと子どもの学校や塾、通勤経路が変わるなど大変です。

 その大変さのなかで、お客さまは35年間にわたって一生懸命にローンを返しながら生活されていくわけですから、そこに寄り添いたい、つまり生活に密着したコストを削減できないかと思ったんです。「暮らしのサービス」をうまく活用すれば、年間10万円から15万円、35年間で350万円以上をセーブできる。ベンツのAクラスが一台、新車で手に入ります。

片山 提携先を集めるのは、大変だったでしょう。

浜田 1年半かけて、60社超まで増やしました。いずれは、スマホのアプリにして、店で提示するだけで使えたり、予約もできたりなどラクに使えるようにしたい。

片山 住宅ローンだけで勝負するのではなく、むしろその周辺にビジネスのタネがあるんですね。

浜田 長い人生で、住宅ローンを借りる手続きにかかる時間は1週間かそこらです。しかし、お客さまとの付き合いはそこから35年間続く。われわれは、お客さまの住所、電話番号、年収から家族構成まで、すべてを把握しているからこそ、しっかりと寄り添えます。学資や介護のローンなど、お客さまが必要とするサービスの“紹介業”として、長くいい関係を築きやすいといえます。

なぜアルヒを選んだか

片山 ところで、畑違いの金融業界にくることについて、浜田さん自身、迷ったと聞いています。

浜田 2012年頃、いろいろなオファーをいただきました。「ITの世界に戻って」という話もきたし、大企業からもお声がかかりました。しかし、何兆円、何千億円も売り上げる企業で、売り上げを1割伸ばす、というような仕事は、「俺じゃなくてもできるだろう」とお断りしました。それより、手つかずの業界で、世の中にないサービスを一からつくる仕事に挑戦したかった。その意味で、この会社は楽しそうだったから引き受けたんです。

片山 ちょっと聞いてみたいのですが、浜田さんがデル・ジャパンで活躍されていた頃、私は富士通やNECをよく取材していたんですね。当時、なぜ一気にデルが日本のパソコン市場を席巻したのか、よくわからなかった。なぜですか。

浜田 デルの超ウルトラスピード経営に比べたら、当時の国内企業は遅かったですよね。デルの社員は、朝9時から夜7時まで、スポーツ選手のように働いていました。たとえば、大学出たての女性社員が、一人で電話だけで月何億も売っていましたからね。

片山 へえ。

浜田 製品の寿命が3カ月しかないといわれるなかで、みんな凄まじく働いていた。一方で、ダラダラ働いているどうしようもない社員なんか一人もいなかった。報酬はいいし、20~30代でもできるヤツは昇進する。加えて、徹底的にコストを削減し、在庫ももたず、チャネルは通さず、メーカー直販で流通コストを抑えていました。

 僕は、パソコン市場が立ち上がり、デルが世界一に上り詰めるまでの約10年間を、創業者と一緒に走りました。デル・ジャパンにいた当時、米デル本社の副社長も兼ねていましたが、副社長の平均寿命は2年といわれていました。2年でストレスでダウンするか、クビになるか。その代わり報酬はいいですけどね。

片山 いかに日本が緩かったかということでもありますね。

浜田 そうですね。

産休・育休復帰率は100%

片山 いま、アルヒの正社員は何人ですか。

浜田 300人強です。フランチャイズを入れると1200人くらいですね。

片山 それでいて、2.4兆円の融資残高はすごいですね。

浜田 2、3年後には3兆円以上確保しているでしょう。おかげさまで、「フラット35」の実行件数は7年連続で日本一となりました。大手銀行を含む住宅ローンの実行金額についていえば、メガバンクさんや信託銀行さんに次いで6位です。来年か再来年には、ベスト5入りができるだろうと思っています。

片山 目標は、融資実行金額で年間1兆円、住宅ローンにおけるシェア6%で全金融機関中トップ3入り、と。野望ですね

浜田 おっしゃるとおりです。10年もしたら、住宅ローン中心のB2C版オリックスみたいになれたらうれしいですね。

片山 そのためにも、新しいビジネスがほしい。

浜田 まあ、あんまり身の程知らずのことをしても仕方がないので、一歩一歩です。まずは、住宅ローン市場でもっと大きくなってからですね。

片山 日本一働きやすい会社、「明るい農村みたいな会社」を目指すと話していらっしゃいますね。デル時代のような働き方とは、全然違うんじゃないですか。

浜田 古き良き時代の農村のように、みんなで助け合うような会社にしたいと思っています。

片山 どういうことですか。

浜田 うちの会社は、営業はともかく事務は、複雑で長いプロセスを粛々とこなさなくてはなりません。電子化を進めても、関係する法律は多いし、審査や書類チェックなどの業務が多少は残ります。外部からきた人材がすぐにできる仕事は少なく、高い熟練が必要です。

片山 つまり、長く働いてもらわなくてはいけないということですね。

浜田 はい。社員は6割が女性で、メガバンクにいたような優秀な人も多い。彼女たちに長く働いてほしいですね。

片山 女性活用ですか。

浜田 いや、女性活用といっても、経団連がいうようなこととは違います。だいいち当社のように、女性のほうが多く、かつ専門職に向いている企業は少ない。にもかかわらず、その貴重な女性人材が、子育てや親の介護で辞めざるを得なくなるケースもある。「会社の制度を変えるから、残ってほしい」という気持ちから、まずは、時短勤務を使いやすくしたんですね。

 そしたら、産休に入る女性が増えた。現在、女性社員の十数%が産休、育休中です。この2年間の復帰率は100%。戻ってこない人は一人もいない。別に結婚してもしなくても、子どもがいてもいなくてもいいけれど、多様な働き方を許容できる会社にしないと、業績は伸びません。うちには、70代以上の社員も数人いますからね。

片山 定年制に対して疑問を持っているといっていいですか。

浜田 そうですね。チームワークの大切さを理解し、能力・体力があれば、高齢者でも、中学を出たばかりでもいいんですよ。10代の優秀なプログラマーがいたっていい。僕は、グローバル企業で働いてきて、グローバルシティズンシップがしみついているので、それが当たり前なんです。たとえば、デルの日本本社では当時、16カ国の人が働いていたと記憶しています。日本法人の採用トップは、英語と日本語が達者なチリ人で、中国法人に行って日本語で中国人の採用面接をし、「君は日本語が上手だね」なんてやっていた。マーケティングのトップは英国人でしたからね。うちの会社も、いまは、ブラジル、中国、韓国ぐらいしかいませんが、これからもっと、外国人を増やしたいですね。
(構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)

【浜田さんの素顔】
片山 好きな食べ物、嫌いな食べ物はなんですか。

浜田 好きなのは、イタリアンかな。自分でも料理をするので、イタリアンならほぼ全部できますからね。フレンチは難しいけど。

片山 嫌いなものは。

浜田 汗がだくだく出るような激辛は、苦手です。

片山 ストレス解消法は何ですか。

浜田 ストレスはありません。僕と会社は一体です。だから、飲みにいった帰りのタクシーでメールチェックするのも、平気ですね。私生活も楽しいですからね。土日はヨットで海にいます。クルマ、絵画、インテリア、オペラ、舞台、歌舞伎も好きですね。いろいろな会社を経験したこともあり、おかげさまで友人のネットワークはものすごく広い。HOYAを辞めたあと、送別会が8カ月続いたくらいです。

片山 最近読んだ本は。

浜田 最近、本は読んでないです(笑)。

片山 行ってみたい場所、再訪したい場所はありますか。

浜田 もう一回行きたいのは、レバノンのベイルート。長い歴史があって、悲しい内戦の爪痕も生々しいんですが、西洋と東洋、イスラム教文化とキリスト教文化が混じり合う、エキゾチックな町でした。いまだに忘れられない。

片山 自分の性格を一言でいうとどうですか。

浜田 極めて直接的。ダイレクト。前向き、チャレンジする。熱い。毎回、思いっきり160キロの直球を投げている感じです(笑)。

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片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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