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「生保、金利低下で国債圧縮・外債シフト・円安後押し」報道に、生保首脳から異論噴出

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「生保、金利低下で国債圧縮・外債シフト・円安後押し」報道に、生保首脳から異論噴出の画像1国内生保トップの日本生命保険本社
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 日銀が4月初旬、大規模金融緩和を実施して以降、為替市場は円の全面安の局面が続き、100円の大台に迫った。この間に、市場を駆けめぐったのが、生命保険各社が資産運用計画を大転換し、国債を圧縮、外債買いに一気にシフトするのでは–との観測だ。この話はまことしやかに伝わり、円安進行に一層の拍車をかけた。生保各社の幹部は「ありえない話」と戸惑いを隠さないが、そこで一体、何があったのだろうか?

 日銀の大規模金融緩和の発表以降、生保各社が頭を悩ますのが国債市場の金利だ。国債は生保各社の資産運用の約半分を占めるが、日銀が毎月の新規国債発行額の7割を買うとの方針を表明したことで、長期国債の金利は低下。生保関係者は「金利を云々する前に、そもそもわれわれは市場から押し出されてしまった」と嘆く。

 こうしたなか、市場の注目を集めたのが新聞各紙の報道。なかでも日本経済新聞は、市場や業界関係者の談話を盛り込みながら、「生保マネーが国債を圧縮し、外債買いに動いている可能性が高く、その動向を世界が注視している」と報道した。生保が円安を後押ししているような印象を強烈に与えたのである。

 確かに、長期国債の利回りが見込めなければ、各社は運用の利回りが保険契約者への予定利率を下回る「逆ザヤ」状態に陥る。逆ザヤを恐れた生保が国債を売却した資金を外債に流しこむというのは、門外漢からすると理解できる筋書きだ。単純に、円安がさらに進行する前提で、外債を大量に買いに動けば、為替差益を得ることができるからだ。

 この報道に生保首脳は怒りを隠さない。「これまで持っていた国債は(利回りが)一定程度保証されている。常識的に考えて、それを売って外債を買うわけはない。投資ファンド筋か何かがデマを流し、それにマスコミが踊らされている」

●生保保有の国債は満期保有がほとんど?

 生命保険協会の調べでは、国内生保43社合計の1月末の国債の運用高は145兆円。そのなかでも機動的な売買を前提とした会計上の区分の国債は、地方債などと合わせた額が大手4社で合計17兆円程度。最大手の日本生命保険は1兆円にも満たない。「生保の国債は満期保有目的の所有がほとんど。流動性が高い国債の割合は多くない」(格付け会社アナリスト)というわけだ。 

 東日本大震災後に円高が進んだ際にも噂されたのが生保マネーの動き。被災者への保険金を払うために、生保が外債を売り、原資にあてたという話である。前出の首脳は「現金資産もあるし、売るにしても国債を売れば問題ない。どこから出てくるのかわからない話」とこれを一蹴する。

 別の生保幹部は「国内43社だけで300兆円以上を運用する生保だからこそ、市場を動かすのに都合良く材料にされている。だが、われわれの資産保有は長期がほとんど。しっかりと運用方針を世間に伝えてこなかったことも悪いが、ことあるごとにこんな話を流されては……」とこぼす。

 生保各社は4月下旬に今年度の運用計画を発表する。日銀の想定外の動きで、青写真の修整を迫られるのは確か。だが、関係者の話を総合すると「極端な資産の圧縮や買い増しはない。様子見だろう」というのが各社の一致した資産運用の方向性のようだ。

 というのも、国債で稼ぐはずだった運用益をどう補うのかは課題だが、すでに所有している外債が円安で想定以上の含み益を生んでいる。「運用部門は、本当は何もしなくてもよい状態だろうが、何もしないと仕事をしてないと思われるから、少し外債を買い増す程度では」(中堅生保関係者)との軽口も聞こえる。経済環境が不透明な現段階で、リスクを負って無理をする必要性はないというわけだ。

 したたかな「生保マネー」の動きは、経済情勢が落ち着く7月の参院選後が焦点となりそうだ。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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