子会社の富士ゼロックスで不祥事が発覚した富士フイルムホールディングス(HD)は6月29日、株主総会を開いた。
富士ゼロックスで起きたスキャンダルは、ニュージーランド(NZ)とオーストラリアの販売子会社で売り上げを水増ししていたというもの。助野健児社長から型どおりのお詫びはあったが、「真の反省の色は見られなかった」というのが株主たちの多くの意見だった。
そのため、古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者)を取締役として再任する議案に対する賛成率は83.26%、助野氏のそれは80.51%と低かった。文字通り“ワンマン”といわれる古森氏の昨年の支持率は94.68%で11.42ポイントも下がった。存在感の薄い助野氏も昨年は97.20%だったが、16.69ポイントも下がった。
富士ゼロックスの不正の実態について、きちんと説明責任を果たさなかったトップに株主が異議を申し立てた格好だ。しかも、株主総会で示された決算は監査法人の「適正意見」のお墨付きを得ていない「仮」決算。有価証券報告書の提出期限を7月31日まで1カ月間延期した。富士フイルムHDは仮決算で株主総会をなんとか乗り切ったのだ。
持ち株会社・富士フイルムHDと中核事業子会社・富士ゼロックスが対立――。富士ゼロックスで起きた不正会計問題の背景には両社の確執があった。
富士フイルムHDは6月12日、傘下の富士ゼロックスで発覚した架空売り上げの責任を取らせ、山本忠人会長、吉田晴彦副社長、柳川勝彦取締役専務執行役員や監査役を含む5人の役員を6月22日の株主総会で退任させると発表した。一方で栗原博社長は続投した。
古森氏が富士ゼロックスの会長を兼務し、富士フイルムHDから合計7人の役員を派遣する。助野氏は「富士ゼロックスへのガバナンス(企業統治)を強化する」と述べ、親会社主導で体制を抜本的に見直す考えを示した。9月末までに経理や監査部門を統合する方針だ。法務部門の統合も検討するという。
子会社を統治できなかった富士フイルムHD
ここで、今回の問題を振り返っておきたい。
富士フイルムHDは、4月末に2017年3月期決算の発表を予定していたが、外部の専門家でつくる第三者委員会による、海外で起きた不正会計の調査が長引き、発表できなかった。
連結純利益段階に及ぼす影響は、当初220億円の損失と見込んでいたが、375億円に増加した。不正会計は富士ゼロックスのNZの販社だけでなく、豪州の販社でも発覚した。架空売り上げを主導したのはNZ販社の社長だ。彼が豪州に移って同じことを行った。