日本政府は国際世論を味方に付けよ
米国が自国優先の考えを強めるなか、アジア新興国のなかには、今後の世界情勢への不安を強める国が増えている。北朝鮮問題への不安、フィリピンなどでのイスラム国の台頭、中国の海洋進出などはそうした不安心理を高める要因といえる。
この状況は、日本にとってチャンスかもしれない。日本は安全保障面では米国との関係を重視し、その意義を各国と共有すべきと考える。同時に、経済連携面では各国の利害を調整する役割を積極的に担うべきである。
まず、アジア各国が求める経済連携に関する協議を重ね、日本と各国の利害を調整する。そのなかで、日本の主張を受け入れる国に対しては、インフラ開発などの支援を提供すればよいだろう。こうすることで、日本の主張をサポートする親日国を獲得することができる。
今、日本に必要なことは、国際連携の強化、自由貿易の促進など、必要かつ正しいことを冷静に主張し、世界各国の利害を調整する役割を発揮することだ。これまでは米国を中心にそうした議論が重ねられてきた。トランプ政権にそれを期待することはできない。
その虚を突くかたちで、中国は自国を中心とした東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を進めようとしている。ドイツは中国との関係も重視している。米国の地位が低下し、中国、ドイツの発言力が高まると、国際社会は多極化、不安定化に向かう恐れがある。状況次第では、日本の存在感が低下してしまうかもしれない。
それは避けるべき展開だ。今後はアジアを中心に親日国の獲得に力を入れ、日本の発言力を高める必要がある。それによって、欧州各国との政治・経済的な関係をより強固なものとすることもできるだろう。
多国間の経済連携を進めるためには、日本の構造改革も不可欠と考えられる。労働市場の規制緩和、農業分野での付加価値の増大など、取り組むべき分野は多い。国内外でよりオープンな経済運営の在り方を目指すことが求められていると考えられる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)