2012年12月以降、日本の景気は緩やかに回復してきた。17年7月末まで景気は回復基調を維持し、回復期間は56カ月に達した。このペースで景気が推移すれば、いざなぎ景気(1965年11月~70年7月の57カ月間)を抜く可能性が高い。そうなると、戦後2番目に長い景気回復が実現する。ただ、当時と現在では経済環境が大きく異なる。いざなぎ景気は高度経済成長期に当たり、当時の実質GDP成長率は、毎年1ケタ台後半~10%程度の水準にあった。一方、16年度の実質GDP成長率は1.2%だった。その後の成長も年率1%前後で推移している。人口の減少、社会保障制度の持続性への不安、財政の悪化懸念、デフレ経済など、高度経済成長期とは対照的な経済環境が続いている。
8月3日に内閣改造を行った安倍首相は経済再生を最優先すると述べた。この考えは、GDP成長率を高めることにほかならない。足元の経済環境を見渡すと、その成否は構造改革の推進にかかっている。そのためには、長期的に安定した政権基盤が必要だ。このように考えると、経済基盤の強化につながる政策を実行し先行きへの期待を高められるか否かは、安倍政権の支持率を左右する要因のひとつといえる。
深刻化が進む産業界の人手不足
現在、日本の景気は全般的に緩やかな回復を維持している。短期間で景気回復のペースが鈍化するとは考えづらく、専門家の多くが景気のいざなぎ超えを確実視している。
マクロベースで実質GDP成長率がプラスの水準で推移する一方、経済活動の足かせとなる問題も浮上してきた。それが、“人手不足”だ。宅配最大手のクロネコヤマトはアマゾンなどのインターネット通販を経由した物流量の増大を受けて、配達時間の見直しを余儀なくされた。また、配送量の増加から外部委託費用が増加し、同社の4-6月期決算は100億円の営業赤字に陥った。
こうした状況は他の業界でも発生しており、日本全体で利益なき繁忙が顕著となっている。特に、飲食や建設、運送などの分野では人手不足が顕著だ。中小企業の経営者からは、組み立てなどの単純作業に従事する人手の確保が難しいとの声もよく耳にする。