「数字」重視の成果主義を強いる、間違った経営者たち…売上や利益などコントロールできない
「誰のおかげでメシが食えてると思ってるんだ!」などと偉そうに言うおじさんも、奥さんが家庭を支えてくれているから仕事ができていることを忘れてはならないのだ。
そもそも、売上高や利益などの財務的成果は直接コントロールできない。直接コントロールできないのに、それをなんとかしろと言うから、不正にもつながるのだ。実際、東芝も富士ゼロックスも、売上や利益に対する過剰なプレッシャーが不正会計の温床になっている。
コントロールできるのは行動だけだ。財務的成果はそれに反応して生まれるにすぎない。そうであるならば、少なくとも担当者レベルは「何をすべきか」という行動指標で測られるべきだ。行動指標のような非財務的指標の成果で測れば、営業部門だろうと経理部門だろうとまったく同じように評価できる。
前提となる役割定義
非財務的指標で成果を測るためには、各部署の役割を定義することが必要だ。「各部署の役割なんて、大体決まっているじゃないか」と思ったら大間違いだ。ある会社では、社長が「ウチの経理部の仕事は決算業務ではない」と公言していた。その社長が経理部に望んだのは、会計情報を経営に生かす経営参謀としての役割だ。だから、多くの会社で「これぞ経理の仕事」と思われている決算関連業務をどんなに一生懸命やっても、その会社では評価されない。
営業部門も、「売上高よりも倫理的行動が優先する。倫理的行動を優先するならば、売上高をあげなくてもよい」という行動指標が明確にされていれば、数々の不正も防げるだろう。
各部署の役割定義は、経営者にしかできない仕事だ。経営者が定義した役割を各部署が遂行しても財務的成果が上がらなかったとしたら、それは役割定義が間違っているのであり、経営者の責任である。その責任を放棄して、担当者に財務的成果を求め過ぎるからおかしなことになるのである。少なくとも担当者レベルは、役割定義に基づく非財務的成果を上げたら、それで評価されるべきなのである。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)