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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

ZOZOTOWNが百貨店業界を破壊し始めた…「ゾゾ化」ためらい1.6兆円も売上高消失

文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント

大きな会社ほど新しいビジネス・モデルに対応できない

『イノベーションのジレンマ』(翔泳社/01年)は、米ハーバード・ビジネス・スクール教授(当時)だったクレイトン・クリステンセン博士が著した経営戦略の名著だ。

 成功している大企業は、現在奉仕している大顧客の顧客満足度をいっそう高めようとする。その結果、現在商品や技術の機能改善、向上に全力を注ぎ、多くの場合、価格も改訂(値上げ)することができる。そんな企業は、市場の片隅に出現した新奇な技術や商品(=イノベーション)について力を注ぐことはできにくい。イノベーションの技術要素については大企業のほうが凌駕していても、である。そうこうしているうちに、イノベーションである新商品・サービスは急速にビジネス規模を拡大し、やがて既存大企業をも凌いでしまう、というのがこのセオリーの骨子だ。

 クリステンセン博士は、1990年代におけるコンピューターの記憶装置(ディスク)ビジネスの変遷を調査して上記を説明した。メインフレームに接続する大型ディスク・メーカーが、5インチなどの小型フロッピーディスクの出現に手をこまねいて、衰退していった。

 私は旧著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版)で、写真フィルムとデジタル・カメラの例で説明した。デジタル・カメラを発明したのは、皮肉なことに倒産した写真フィルムの老舗、コダックだったのだ。

象はなぜ子犬にまけてしまうのか

 スタートトゥデイがZOZOTOWNを開設したのは、04年のことだ。当初は収載していた商品は、ブランド数で17しかなかった。同社がマザーズに上場したのが07年のことなので、それ以降は業績が開示され、財務数値を追うことができる。07年3月期、つまりZOZOTOWNを開始して3年たって、ブランド数は680に、ブランド(出店者)の商品取扱高は112億円、ZOZOTOWN側の取り扱い手数料が主となるスタートトゥデイの売上高は60億円にすぎなかった。

 ZOZOTOWNが成長を加速したのは、05年に国内最大手のセレクトショップであるユナイテッドアローズが本格出店したことだといわれる。つまり、ZOZOTOWNはサイトを開設した04年から07年まで、業容的には本当に小さな存在だった。サイトの総売上が100億円にやっと届いた(07年)、百貨店の大型店舗ひとつにも及ばない存在だったのである。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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