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鈴木貴博「経済を読む目玉」

話題のVR旅行、6千円で実に楽しかった…往復20時間かかる海外旅行の必要性が議論に

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 なぜ「泣く泣く」なのかも解説しておくと、仕事で数カ月に一度、ニューヨークは必ず出張に出かけているのだ。なので、ニューヨーク市内観光も、ニューヨークリブステーキも、どちらもかなり飽きがきている。ただ逆にいえば、それだけニューヨークに出かけている者の立場でこのVR体験を評価できるので、取材的には一番良い行き先を選んだともいえる。

これはかなり良い体験である

 実際に体験をしてみてどうだったのか。全般的に「実に楽しかった」というのが、まずはの感想。後で詳しく解説したいのだが、注目のVR体験だが、確かに画質は現時点ではいまひとつ粗い。また時間が10分程度と物足りないといえば物足りない。

 とはいえ、ニューヨークに頻繁に出かける立場でいえば、実際にニューヨークに行って体験できるのは、ほぼこんな感じで間違いない。往復26時間かけて出かけるよりも、池袋まで電車で6分で同じ体験ができると考えれば、これはかなり良い体験である。

 そしてもうひとつの楽しみの機内食だが、これは実によくできている。施設内に大規模な厨房は見当たらないことから、近所の本格的なお店からケータリングで持ち込んでいるのだろうか。いずれにしても、ニューヨークの有名店と比較してそん色のない食事が提供されている。

代替財

 さて、経済コラムとしてはここから本題に入らせていただきたい。現状でもここまで良いVR海外旅行体験ができるとすれば、これから先、さらに内容が充実した場合に、いったいどこまで仮想旅行体験は進化するのだろうか。そしてそのとき、リアルな海外旅行需要は減少していくのだろうか、それとも逆に増えるのだろうか。

 すでに述べたように、今回体験したVRは時間も10分と限られているし、画像解像度はかなり粗い状態のものだった。もしこのまま技術が進化すればハイビジョン上の4K画像を提供することも可能だろうし、10分ではなく2時間でも8時間でも仮想旅行コンテンツを用意することは可能である。

 しかし、そのようなサービスが登場して、それが本物のニューヨーク旅行体験とまったく遜色のないものだったとしたら、われわれはわざわざ往復26時間かけてニューヨークに出かける必要があるだろうか。

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

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