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高橋篤史「経済禁忌録」

一大地下経済ネットワーク、警察捜査で全容解明か…あの有名寺院や大手予備校FCまで

文=高橋篤史/ジャーナリスト

LCA

 さて、リミックスポイントの取締役となった佐戸容疑者だったが、11年8月には思わぬ場所にその姿を見せていた。和牛預託商法を展開していた安愚楽牧場の債権者説明会がそれである。同社は個人投資家から集めた預託金を中心に約4300億円の負債を抱え、民事再生手続きを申し立て、経営陣が居残ったまま債務カットで切り抜けようと企てていた。その説明会で佐戸容疑者は、後に特定商品預託法違反に問われる三ヶ尻久美子社長の助っ人として、常務執行役員の肩書で唐突に登場したのである。もっともこの虫のいい話は債権者の反発を招き、その後、安愚楽牧場はあえなく破産に移行している。

 他方、早稲田大学中退後に朝堂院氏の政治団体「法曹政治連盟」に出入りしていた四方容疑者は、08年頃から東邦グローバルアソシエイツ(現クレアホールディングス)を手始めに不振上場企業の経営に関与を始めていた。同時期に接点を持ったのは当時、東証2部に上場していた日本エル・シー・エー(現エル・シー・エーホールディングス、15年12月に上場廃止、以下LCA)だった。

 当時、LCAで会長を務めるのは不動産業出身の柳瀬健一氏。柳瀬氏は大阪で都市綜研インベストバンクという会社も経営しており、個人投資家相手の不動産投資商品「みんなで大家さん」を始めたところだった。四方容疑者は柳瀬氏の経営コンサルタントとなり、指定した会社宛てに第三者割当増資を実行させるなどLCAに影響力を行使した。

 その四方容疑者は、とある肩書も持っている。東京・銀座の雑居ビルに入るNPO法人の事務局長というのがそれだ。そして、このNPO法人を起点とする人脈は現在、名古屋地検特捜部が捜査を進める興正寺(名古屋市昭和区)を舞台とする巨額の資金流出事件(本連載の10月3日付記事を参照)に深く関係しているのである。

 最大の資金流出先である日本開発研究所(東京都港区)の代表取締役を務める70代男性は件のNPO法人の専務理事を務めるだけでなく、四方容疑者が関与していた時期に近接した09年2月から12年8月までLCAの役員を務めていた。また、約5億円が流れた先のregeneration(東京都大田区)の代表取締役もNPO法人の事務局関係者で、上場廃止直後からLCAの社長を務めている。

注目される捜査当局の動き

 さらにNPO法人専務理事の70代男性は柳瀬氏が経営していた「みんなで大家さん」の販売会社を15年頃に譲り受け、興正寺の元責任役員が主導して建設した名古屋市内のビルを投資商品化して昨年8月から出資金集めを行っている。「みんなで大家さん」は元本償還の遅延が数年前から常態化しており、内情は火の車と見られる。直近では前出したシルバー精工の末期に蠢いていた関係者の影も周辺にちらつく。

 このほかにも人脈は予備校会社モアアンドモア(横浜市緑区)の不可解な破綻劇とも接点がある。モアアンドモアはナガセが展開する「東進衛星予備校」の大手フランチャイジーだったが、今年3月に民事再生手続きを申し立てて破綻。不可解というのは、倒産前後で負債額が大きく修正されたからだ。それまで同社は16年12月期の負債を20億円としていたが、隠れ債務が発覚したことで2倍近い38億円へと修正していたのである。

 その隠れ債務の債権者の1社はトータル・エネルギー・ソリューションという都内にある実態不明の会社だった。倒産時、同社はモアアンドモアの創業者が持つ全株に譲渡担保権を設定していたから、倒産の黒幕ともいえた。そのトータル・エネルギー・ソリューションの代表者は別に新日本技建という会社の代表を兼任している。その新日本技建で以前、代表を務めていたのは前述したNPO法人の70代男性であり60代男性だった。

 突破口となった今回のストリーム事件や、それに続く興正寺事件で、捜査当局は地下経済に巣くう融通無碍なネットワークにどこまで迫ることができるだろうか。
(文=高橋篤史/ジャーナリスト)

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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