2013年のREIT市場進出が転機
星野氏は1960年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、米コーネル大学ホテル経営大学院で経営学修士号を取得。日本航空開発(現JALホテルズ)を経てシティバンクに転職。JALでホテル経営のノウハウを、シティバンクで債権回収の手法を身につけた。
1991年、家業である軽井沢・星野温泉の社長に就任。95年、星野リゾートに社名を変更。軽井沢を本拠に「ホテルブレストコート」「星のや 軽井沢」などを経営してきた。
星野氏が異彩を放つのは、シティバンクで鍛えた債権回収の手法を経営に取り入れたことだ。2001年から「リゾナーレ」(山梨県)、「アルファリゾート・トマム」(北海道)、「磐梯リゾート」(福島県)など、経営破綻した大型リゾート施設の再生に着手した。
05年以降、米投資銀行ゴールドマン・サックスグループと提携し、「白銀屋」(石川県)、「湯の宿 いずみ荘」(静岡県)など温泉旅館を買い取り、独自のノウハウで再生させ、収益を拡大した。
13年が事業拡大の転機になった。13年7月、星野リゾートの100%子会社、星野リゾート・アセットマネジメントが運営する星野リゾート・リート投資法人を東京証券取引所REIT市場に上場した。
星野リゾートが再生した物件をリート投資法人に売却して資金を調達、その資金を活用して運営施設数を増やす。リート投資法人は星野リゾートが経営する「星のや」「界」「リゾナーレ」の不動産に投資した。
同リート投資法人の17年4月期(16年11月~17年4月、年2回決算)の営業収益(不動産賃貸収入)は前期比12%増の44億円、当期純利益は5%増の19億円、1口当たりの分配金は1万1621円。5月以降も物件を購入しているため保有物件は49件、取得価格は1134億円となった(17年10月11日現在)。
13年11月、持ち株会社星野リゾートホールディングス(HD)を設立。事業会社、星野リゾートを傘下に収めた。星野リゾートは星のや6軒、界14軒、リゾナーレ3軒のほか、宿泊施設46を運営している。
星野リゾートHDの16年11月期の営業収益は前期比63%増の511億円、当期純利益は3倍増の71億円。有利子負債は30%増の164億円。再生物件をリートに譲渡することによって、有利子負債は相対的に低く抑えられている。
星野リゾートは旅館・ホテル運営と不動産投資ファンドの2つの顔を持っているが、現在では不動産投資に軸足を移している。これが今後の経営に影を落とす可能性が高い。