人口減少・少子高齢化や経済のグローバル化が進むなか、日本経済の成長率は低下傾向にある一方、社会保障費が急増し、財政赤字が恒常化しており、債務残高(対GDP)は200%超となっている。1990年度の社会保障給付費は47.4兆円であったが、2000年度には78.4兆円、10年度には105.4兆円に急増し、17年度には予算ベースで120.4兆円にも達し、その増加スピードはなかなか低下する気配がない。このため、財政・社会保障の抜本改革は不可避であることはいうまでもないが、社会保障費を抑制しない場合、財政を安定化させるためには消費税率換算で20%超の増税が必要であるとの専門家の試算も多い。
にもかかわらず、増税への反対は多い。例えば、時事通信の調査(17年10月22日の衆院選出口調査)では、19年10月に予定する消費増税について、反対は43.3%、賛成33.9%であった。この理由は何か。そのひとつのヒントは、OECDの「格差は拡大しているか」(正式なタイトルは「Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries」)というレポートにあると思われる。
このレポートでは、現金給付や税負担等の観点から、所得の最も低い階層に対する所得再分配を2000年半ばで国際比較している以下の表があり、日本はアメリカ並みの再分配しかしていないことが読み取れる。
この表を見ると、例えば次のことが把握できる。まず、政府から受け取る現金給付(対、家計の可処分所得)の平均は、オーストラリア14.3%、フランス32.9%、デンマーク25.6%、日本19.7%、アメリカ9.4%となっており、日本は福祉が手厚いフランスやデンマークほどではないが、これらの国々と小さな政府であるアメリカの中間程度の現金給付を全体で行っている。
しかしながら、その現金給付の行き先を所得階層別に見ると、現金給付の総額のうち所得の最も低い階層が受け取っている割合は、オーストラリア41.5%、フランス16.2%、デンマーク36%、日本15.9%、アメリカ24.8%である。
このため、所得が最も低い階層が受け取っている現金給付(対、家計の可処分所得)は、オーストラリア5.9%、フランス5.3%、デンマーク9.2%、日本3.1%、アメリカ2.3%となり、日本はアメリカに近い状況となっている。