「結婚式はもしかしたら1回ではないかもしれませんが、成人式は一生でたった1回しかないのです。それが踏みにじられた感じです」
まさに晴れの日の成人式の早朝、うれしい気分で起床したものの、いきなり奈落の底に突き落とされたのが、振り袖の販売・レンタルなどを手がける「はれのひ」の契約者たちだ。1月8日の成人の日の前日、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では、茨城県のつくば店の様子が広がり始めていた。当初は「担当者の寝坊じゃないか」程度の話だったが、翌朝には混乱が広がり、はれのひの“夜逃げ”同然のありさまが一気に露呈した。
「はれのひで晴れ着を購入し、『前撮りをして、そのまま晴れ着は持ち帰り』ということになっていました。本当は去年の11月に前撮りの予定だったのですが、『仕上がりが遅れていて前撮りは難しい』という一方的な連絡が来て、『その分、成人式の後にしっかり撮影する』と。予定がずれることは不満でしたが、まさかこんなことになるとは」
はれのひのトラブルに巻き込まれた新成人・Aさんの母親の話である。娘が金融機関への就職を希望しており、「金融機関の窓口は新年最初の出勤日に晴れ着を着ることがある」ということで、レンタルではなく購入にしたという。総額は60万円弱。この価格で手元に晴れ着が残ると考えれば、お値打ちといえるだろう。しかし、実際は何ひとつ残らなかった。
「もちろん、お金も晴れ着も全部惜しいですよ。それより何より、娘の本当の“晴れの日”をぶち壊されたことが腹立たしい。許せないのは、そこ。もう2度と成人の日はやってこないのに」(Aさんの母親)
結局、Aさんは3年前に成人式を終えた母親の友人のお嬢さんの晴れ着一式を借り、着付けをやっている美容院を押さえて、なんとか晴れ着を着ることはできた。しかし、成人の日の式典には遅刻してしまったという。
「それでも、行けないよりはよかったです。式の後の集まりでは、洋服で来ていた友人もいたのですが、同じようにはれのひの被害者でした。なんか、みんな怒るよりも悲しんでいました。私は、母の友達などが協力してくれたので、『恵まれているな』とも感じた成人の日でしたけどね」(Aさん)
「被害総額は40万円弱です。それでも、成人式は来年なので精神的なショックは小さくて済みました」と言うのは、来年の新成人・Bさんの母親だ。つまり、Bさんは現在19歳。成人式までまだ1年もあるのに被害者とは、どういうことなのだろうか。
「昨年夏に振り袖のレンタルと前撮りを契約したのですが、早めに契約して料金を支払うと割引率が高いんです。成人の日の式典の日取りはもうわかっているので、前倒しで借りることは可能ですよね。選べる振り袖が多いほうがうれしいので、早めに契約するのは一般的ではないでしょうか」(Bさん)
Bさんは大学の近くでひとり暮らしをしているため、打ち合わせや衣装合わせのために何度も戻ってこられないという事情もあり、早めの段階で一気に決めたという。それでも「なんか、日付が決まっているからこそ足元を見られた気がして、腹立たしいですよね」と憤る。