転職、就職、アルバイトの情報サイトを運営するマイナビ、AIを搭載した業務システムHUEを開発したワークスアプリケーションズなども有力候補だ。
フィンテック(金融のIT化)の分野では、17年9月にマネーフォワードがマザーズに上場し、株価は堅調だ。3月1日には上場来高値の5330円を記録した。マネーフォワードが呼び水となって、クラウド会計ソフトのfreeeにも期待が集まっている。大型案件では再上場のユー・エス・ジェイ(USJ)と、「最後のJR上場」といわれているJR貨物が残っている。
ニュースアプリのスマートニュース、クラウドソーシング大手のランサーズなどが大手証券会社のIPOのリストに載っている。テレビCMが目立つようになっている人材紹介のビズリーチも可能性が高い。
3月23日には、低価格ヘアカット専門店の「QBハウス」を運営するキュービーネットホールディングス株が東証1部に新規公開される。キュービーネットは、投資ファンドの出口戦略銘柄だ。人手不足で、低価格ヘアカット業界の業績に疑問符が付いているともいう。キュービーネットの初値は、今後のIPO市場の人気を占う試金石になるかもしれない。
今年も玉石混交は避けられそうもない。
最近は、マイナス金利に加えて金余りもあって、「未上場でも、ビジネスモデルがしっかりしていれば資金は集まる」(IPO予備軍のトップ)との見方が広まりつつある。株式公開が企業を成長させる唯一の手段ではなくなった。「非公開のほうが大胆な経営戦略が取れる。企業体力をつけてから、大型のIPOにつなげたい」と考えている企業経営者も出てきた。
深読みすれば、「いまIPOの先送りを表明している経営者は内部矛盾を抱えている」(前出の新興企業に詳しいアナリスト)という可能性もある。上場審査はかなり厳しくなっているのは確かだ。
IPOは最終ゴールではなく、戦略上どう位置付けるかが重要になってきている。「上場ゴール」の企業ばかり目立って、初値が株価の天井になる“危ない企業”も後を絶たなかったが、企業経営者のIPOに対する意識が少しずつ変わってきたのかもしれない。