元横綱日馬富士による傷害事件をめぐる日本相撲協会の対応に問題があったとして、1月に相撲協会理事を解任された貴乃花親方が、内閣府の公益認定等委員会に告発状を提出した。
貴乃花親方のこの思い切った行動は、その約1週間前に女子レスリングの伊調馨選手が日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワハラを受けているとする告発状が、同じく同委員会に提出されていた事実が明るみに出たことと無関係ではないだろう。
前近代的な競技団体組織のなかで起こった2つの造反劇はまた、海の向こうで大きな動きとなっているセクハラ告発ムーブメントである「#MeToo」と軌を一にしている。権利意識に目覚めた被害者的立場の人たちが声を上げ始めている。告発された組織の側は自らの擁護に走っているが、社会人として私たちは声を上げた被害者側を強く支援したい。
相撲協会への果たし状
3月9日、貴乃花親方は相撲協会理事会を欠席した。日馬富士による暴行事件への巡業部長としての対応を問われてすでに1月に理事職を解任され、2月2日の理事候補選挙では立候補するも落選しているので、この日の理事会が貴乃花が出席する最後の理事会となるはずだった。
協会には「所用のため」と事前連絡があったが、八角理事長(元横綱北勝海)は「良くないことだね。なんの用かわからないが」と苦言を呈し、尾車事業部長(元大関琴風)は「来ない理由がわからない」と首をかしげたとされる。
この日の貴乃花親方の欠席は確信犯だった。というのは同日、貴乃花部屋のホームページ「貴乃花親方からのメッセージ」コラムが更新され、自身の名前で「内閣府公益認定等委員会に対する告発について」という文章がアップされたのだ。この文章で貴乃花親方は、相撲協会の危機管理委員会による調査が第三者によって行われたものではなく、最終報告でも被害者である貴ノ岩の主張がまったく反映されていない、などとして、以下のように綴っている。
「私は、本日、内閣府公益認定等委員会に対し、代理人弁護士を通して、公益財団法人日本相撲協会による本件傷害事件への対応が、事業の適正な運営の確保に重大な疑義を生じさせるものであることから、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律に基づく立ち入り検査、質問及び適切な是正措置を求める勧告をしていただきたい旨の告発状を提出いたしました」