いわば、相撲協会に真っ向から果たし状を叩きつけている。事件への対応についても、次のように容赦なく告発している。
「本件傷害事件の調査・報告、日本相撲協会の各組織による決議・発言等については、不当・不適切にとどまらず、違法なものも存し、公益法人としての日本相撲協会及びその各組織の適正な運営には次に述べるとおり、重大な疑義が生じています」
また、相撲協会が委託して同事件を調査した危機管理委員会については「被害者の同意を得ることなく、被害者の具体的な診断内容を入手して報道機関に公表しています」と指摘した。個人情報保護という観点からはその通りだろう。
「さらに同委員会は、被害者の主張を聞く前に中間報告要旨を公表し、その後の最終報告においても重要な点で被害者の主張が全く反映されておりません。このように、本件傷害事件に関する日本相撲協会による調査は、公正中立な内容とは到底評価できないものであり、身内による全く不十分な調査と報告をもって済ませようとしています」
貴乃花のこの指摘、主張には説得力がある。危機管理委員会が相撲協会の内部機関である以上、被害者側からのこのように指摘されてしまえば反論することは難しいだろう。
前述の伊調問題においてレスリング協会の倫理委員会がただちに第三者委員会に調査を委嘱したのは、相撲協会の内部機関である危機管理委員会の調査結果が、最後まで「眉唾もの」として受け止められたいきさつを踏まえたものとも推察される。
貴乃花はさらに告発状のなかで、巡業部長でありながら協会に事件の報告を怠り、調査への協力要請も再三にわたって拒否したことなどから理事を解任されたことについて、「解任事由に相当するような理事の職務義務違反になると認めることは困難」と主張している。そして公益認定等委員会に「(協会への)立ち入り検査、質問及び、適切な是正措置を求める勧告」を求めたとした。
相撲道、信念の人
前述の通り、貴乃花親方は公益財団法人を管轄する公益認定等委員会に告発状を提出するという手段を、伊調問題の報道をみて思いついたのではないか。3月1日に「週刊文春」(文藝春秋)によって第1報が報じられ、貴乃花は3月9日の理事会前に弁護士と相談して、同じ行動を取ったと推察される。