利益率は改善したが客離れが続き株価は停滞
こういった状況から、内部努力だけではコスト上昇分を吸収できないとし、鳥貴族はついに値上げに踏み切ることとなった。値上げは、株式市場では当初、好感された。利益率が高まることを期待して、値上げの発表があった17年8月28日の終値は前週比末8.2%高の2815円まで上昇した。
その後は上昇基調が続き、19.7%の増収だった17年7月期決算が発表された翌9月14日は前日比14.9%高の3075円まで上昇し、3000円を超えた。
しかし、値上げを実施した最初の月である10月の既存店客数が前年同月比7%減、既存店売上高が3.8%減となったことが発表された翌11月8日は前日比7.4%安の2911円となり、3000円を割ることになった。
その後は3000円近辺をさまよう状況が続いたが、11月の月次報告書が報告されて流れが変わった。客数が0.5%増、売上高が5.3%増という結果が示され、値上げによる客離れが起きなかったことを市場は好感。発表の翌12月7日は前日比6.2%高の3255円に上昇した。
さらに、16.2%の増収だった17年8〜10月期決算が発表された週明け12月11日は前週末比10.1%高の3540円にまで急騰。その後も上昇が続き、12月25日には年初来高値となる3965円を付けた。
ところが、客数が2.1%減だった12月の結果が報告された翌18年1月10日は前日比6.3%安の3650円にまで下げた。その後の株価は下落が続き、2月と3月は再び3000円近辺で膠着状態が続いている。
前述した通り、1月と2月は客数が大きく落ち込んでいる。売上高も前年割れだ。そのため、積極的な買いに走れない状況のようだ。
こうした株価の動きから、投資家は値上げによる収益改善と新規出店による成長を期待する一方、値上げによる客離れを懸念しているように見える。値上げの判断が正しかったかどうかを見極めようとしているのだろう。
値上げの是非が気になるところだが、競合との競争の行方も気になる。鳥貴族の成功を見て、鳥料理居酒屋が増えているためだ。
ワタミは不振が続いていた総合居酒屋「和民」を、焼き鳥が主力の「三代目鳥メロ」や、から揚げが主力の「ミライザカ」に転換したところ、売り上げが上がっている。
「白木屋」を運営するモンテローザは16年7月に「豊後高田どり酒場」の1号店をオープンし、全国に約50店を展開している。「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーは同年10月に「やきとりスタンダード」をオープンし、すでに全国に8店を展開している。同社は今年3月22日に新業態「焼鳥つかだ」もオープンする計画だ。
昔からある焼き鳥居酒屋との競争も激化するだろう。「やきとり大吉」は全国に400店以上、「秋吉」は100店以上、「とり鉄」は50店以上を展開している。鳥貴族は600店以上を展開しているが、ゆったりと構えてはいられないだろう。
鳥貴族が値上げしたことで、こういったライバル店に客が流れた側面も否定できない。今後の勢力図が大きく変わることも考えられる。いずれにしても、鳥貴族はより一層の企業努力で客離れを食い止める必要があるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。