中央官庁や自衛隊を長く取材してきた経済ジャーナリストの秋山謙一郎氏は、こう説明する。
「財務省や経済産業省といった中央官庁に準えると、このケースでは、まず村川海将は勇退でしょう。残る山崎陸将と丸茂空将のうち、一足先に陸幕長に就任した山崎陸将が統幕長へ就くのではないでしょうか。丸茂空将は山崎陸将と同期ではありますが、実年齢では上なので、しばらく空幕長に残っても、そう遠くないうちに勇退して後進に道を譲るとみるのが妥当です」
制服組自衛官たちは、人事をどうみているのか。陸上幕僚監部勤務の2佐が語る。
「ほぼ、『山崎陸将の統幕長就任で決まり』というムードです。しばらくうちは統幕長人事から遠ざかっていたので、順番からいっても妥当でしょう。むしろ関心事は、次期陸幕長が誰か、という点に移っています」
一方、昨年12月、空幕長を交代させたばかりの空自は、統幕長人事について無関心を装う。
「統合運用化が進み、統幕のウエイトが重くなったことは確かですが、空自のオペレーションは空幕と航空総隊です。今、空自は、丸茂空将を空幕長に置き、“エース”と名高い前原弘明空将を現場のトップに据えたツートップ体制で、この上なくいい雰囲気の組織体制が築かれています。統幕長を出す・出さないではなく、空自としてまとまって統幕にモノが言えることが大事です」(空幕関係者)
運と巡り合わせで左右される統幕長職
実際、統幕長人事は、「運」と「巡り合わせ」の要素も大きい。また防衛省・自衛隊では、“キャリア組”として遇される防衛大卒業生や幹部候補生入隊した一般大学卒業生の幹部自衛官たちは、他の中央官庁のキャリア組たちが事務次官やこれと同格の役職を目指してシノギを削るような組織風土とは異なるという。
秋山氏はその背景について、こう解説する。
「中央官庁のキャリア組は毎年、せいぜい15人から20人程度の採用です。人数が少ないうえに、東京大学出身者が大半です。これに対して防大は毎年約350人から400人程度の卒業生がいます。自衛隊に入隊して陸・海・空と3つに分かれますが、これだけ人数が多ければ、幕僚長を目指すことに臨場感が持てないのでしょう」
その代わり、防大卒の幹部自衛官たちが目指すのは、「陸なら連隊長、海なら艦長、空なら機長や部隊の長、いずれも『指揮官職』と呼ばれる中間管理職」(秋山氏)だという。