都心百貨店、宝石売れまくりで絶好調! 一方、地方百貨店はSCに客奪われマイナス成長
高級ブランドを含む身の回り品の4月の売り上げは、主要10大都市は同3.5%増だったが、10都市以外は同2.3%減。美術品・宝飾・貴金属は10大都市が同23.7%増に対して10都市以外は8.2%増と、格差は歴然としている。
主力商品である衣料品でも、大都市と地方・郊外は明暗を分けた。衣料品メーカーが売れ残りを減らすため生産量を絞った結果、地方の百貨店には売れ筋の商品が供給されず、ショッピングセンター(SC)と品揃えの違いがなくなった。
広がり始めた高額消費を継続的に取り込むため、高級ブランド品の品揃えを充実させる。高島屋は東京店で今秋、欧州の高級ブランドの売り場を刷新する。改装費用は38億円。松屋は30億円を投じ銀座本店を今秋、改造。仏ルイ・ヴィトンの売り場を1.5倍にする。J.フロントは15億円をかけて、大丸神戸店の仏エルメスの売り場を1.5倍にした。
各社が改装に力を入れるのは14年4月の消費税増税対策である。前回の消費増税の時、96年の百貨店の既存店売上高は5年ぶりの増加(1.8%増)となったが、増税した97年は1.9%減、98年は5.0%減と2年連続してマイナスとなった。今回も増税後は買い控えが起こることが想定される。そこで富裕層を狙って高級ブランドを充実させる。
消費増税だけではない。大規模SCが行く手に立ちはだかる。13年に全国に開業予定のSCは73カ所。イオングループは店舗面積1万平方メートルのSCを8カ所開業する予定。イトーヨーカ堂もSCアリオの出店に積極的だ。これらが出揃う14年は、全国的に顧客の奪い合いが激しくなる。
地方・郊外の百貨店は、大規模SCに太刀打ちできなくなった。これが地方百貨店の低迷の根本的な原因である。大手百貨店は地方に不振店を多数抱えているだけに、先行きは厳しい。地方を地盤とする地方百貨店に至ってはなおさらだ。消費増税とSC攻勢の挟み撃ちで、百貨店の整理が加速する。地方から撤退する百貨店が続出することになる。
●百貨店大手5社、5月は揃って増収
6月3日に発表した大手百貨店5社の5月の売上高(既存店ベース、速報値)は、全社プラス成長となった。5社揃って増収となるのは2カ月ぶり。宝飾品や高級時計は相変わらず好調。天候に恵まれたことで、初夏向けの婦人雑貨が売れた。
大丸松坂屋百貨店では、美術品・呉服・宝飾品の売り上げが前年同月に比べて75%増えた。高島屋では腕時計が56%増。そごう・西武も、婦人向けの高級衣料品や宝飾時計が2ケタの伸び。
全売上高は大丸松坂屋が8.7%増。東日本大震災に伴う減収の反動増のあった12年3月(10.3%増)以来の高水準だ。三越伊勢丹は7.0%増。伊勢丹新宿本店は改装や東京メトロ副都心線の延伸の効果もあって10.7%増。
そごう・西武は2.6%増。高島屋は1.1%増だった。阪急阪神百貨店も14.6%増の高い伸びを記録した。
(文=編集部)