取引銀行から度重なる金融支援を受け、さらに04年には産業再生機構からも支援を受け再建を目指してきたが、財務内容は改善したものの、肝心の営業力は力強さを欠いた。06年に丸紅が同機構からダイエーを買収し、07年にはイオンが丸紅からダイエーの一部株式を取得する。丸紅とイオンでダイエーの再建を進めるも3社の足並みは揃わず、再建は失敗に終わった。
そこで13年にイオンがダイエーを連結子会社化、15年に完全子会社化し、イオン主導で再建を推進。食品スーパーはダイエーとして残す一方、GMSはイオングループの他社に移管した。
しかし、イオン主導でもダイエーの再建は困難を極めている。レジやシステムなどでイオンの手法を取り入れ、イオンのプライベートブランド(PB)を販売し、特売日を旧ダイエー時代の木曜日からイオンの火曜日に変更するなどイオン色を強めた店舗運営を試みるも、運営方法が大きく変化したことで現場は大混乱に陥り、現場の士気が低下。そういった現場の混乱により来店客も戸惑い、客離れにつながってしまった。それが今もなお尾を引いている。
イオン立て直しの道筋
ダイエーの再建のもたつきが懸案とはなっているものの、イオンには一定の成果を見せ、期待を寄せることができる事業も、あるにはある。「イオンスタイル」と「イオンフードスタイル by daiei」がそうだ。
イオンスタイルはライフスタイル提案型の売り場、専門化された売り場が特徴の業態で、イオンのGMS改革の切り札のひとつとされている。16年12月、かつてダイエーの東京の旗艦店として知られていた「ダイエー碑文谷店」を改装して「イオンスタイル碑文谷」に切り替えたことが象徴といえるだろう。「なんでもあるが、欲しいものがない」と言われた、これまでのGMS像からの脱却を図る考えだ。
イオンフードスタイルは食品を強化した業態店で、ダイエーが運営する。現在、ダイエー既存店からの切り替えを進めている。カロリーを抑えた弁当や減塩・無添加の調味料など「ヘルス&ウエルネス」商品が充実しているほか、イートインスペースを充実させて店舗で食事ができる環境を整えていることなどが、従来と異なる点だ。
イオングループとしては、トップバリュを強化することでダイエーやグループのGMSのテコ入れも図る。
近年のトップバリュは「つまらないPB」と評されることもあり、売上高は伸び悩みを見せていた。そこでイオンは、15年度からトップバリュの抜本的な見直しに着手。顧客からの評価が低いものや収益貢献度が低いものなどを削るなどして、付加価値の高い商品開発に取り組んできた。17年度はそれまでの取り組みや値下げが奏功し、トップバリュの売上高は前年比1.6%増の7271億円で3期ぶりの増収となった。
こうした状況からイオンは、19年度にトップバリュの売上高を現在の約1.6倍となる1兆2000億円にする目標を掲げている。
トップバリュの立て直しは一定の道筋が見えてきた。ただ、ダイエーの再建はもう少し時間が必要といえそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。