両社とも同じANAの子会社で、業界2位と3位のライバル企業同士でもあるが、統合自体はスムーズに進められると鳥海氏は続ける。
「こういった統合の話が持ち上がった際、一番問題となるのが『路線が重なっているところはどうするのか?』ということなのですが、ピーチとバニラで重なっているのは成田と関空、台北と関空、沖縄と台北を結ぶ3路線だけ。しかもバニラはもともと成田と関空を結ぶ路線を6月末で廃止にする予定ですし、また関空と台北の路線は深夜に飛ばしているので、路線が重なってしまう部分での問題はほぼありません。
少々懸念される部分としては、ANA100%出資のバニラと連結子会社のピーチでは、マーケティング戦略や企業の雰囲気が違うというところでしょうか。ただし、そこは名前の残るピーチのサービスが引き継がれ、飛行機の機体もバニラの黄色からピーチのピンクに変わるので、大きな懸念点ではありません」(同)
海外から10年遅れる国内LCC、カギは東南アジア便
ピーチの井上CEOも記者会見で「海外との競争に生き残るための統合である」と述べていたが、そもそも日本のLCCは世界的に見て進んでいるのか、あるいは遅れているのだろうか。
「海外と比べて日本のLCCは、感覚的に5年から10年は遅れています。というのも、日本の空港は制限が非常に多かったのです。たとえば米国では1978年に航空規制緩和法が成立しましたが、日本で国内空港市場の自由化が行われたのは1990年代後半。また、今でこそ成田や関空が使えるようになっていますが、かつては空港の発着枠がほとんど空いておらず、LCCなどの新規参入が難しい状況にありました。日本のLCC元年はピーチが就航した2012年なので今年で7年目に突入するわけなのですが、やはり2000年代初頭からLCCが活発化していた海外と比べれば、10年くらい歴史が浅いということになります」(同)
スタートで出遅れてしまった国内LCCだが、今後世界で戦っていくためにはどうすべきなのだろうか。
「ピーチの統合にまつわる話のなかで、日本から6~7時間くらいの、東南アジアへの中距離路線をつくりたいという案が出てきていたのですが、まさしくこの東南アジアへの路線がカギとなるでしょう。現在のLCCの小型の旅客機では、日本から台湾や香港といった、4~5時間くらいのフライトがせいぜいだったのですが、6~8時間の中距離路線が今後実現する可能性は十分に考えられます。そうなれば東南アジアからの訪日客増加が予想されますので、その層を取り込むための基盤づくりが、今、求められているのではないかと思います。