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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

日本人だからこそロシアと因縁の国・フィンランドの合同コンサートで奇跡の光景を起こせた

文=篠崎靖男/指揮者
日本人だからこそロシアと因縁の国・フィンランドの合同コンサートで奇跡の光景を起こせたの画像1「Getty Images」より

 FIFAワールドカップが開催されていることで注目を浴びているロシア。日本代表チームのゲームを、遅くまでテレビで見ていたせいで生活リズムがおかしくなっていますが、「ドーハの悲劇」を知っている世代としては、日本の大活躍が素直に嬉しいです。日本対ベルギー戦も早起きして見ていました。初のベスト8入りは叶いませんでしたが、夢を見せてくれた素晴らしいチームでした。

 4年前の冬季オリンピックがロシアのソチで行われたことも記憶に新しく、ロシアはスポーツに対して国を挙げて振興しています。集団スポーツの分野では、アイスホッケーを除いては、それほど目覚ましい成績ではないのですが、今回のワールドカップでは、大方の予想に反してロシアが活躍を続けており、今後もロシアでサッカー熱は高まっていくのではないかと思います。

 とはいえ、やはりロシアといえば、フィギュアスケートと体操、シンクロナイズドスイミングでしょう。これらは、ソビエト連邦時代から世界をリードする強豪国であることは確かです。今でこそ、日本のフィギュア選手は、技術の高さだけでなく、芸術的な美しさも表現できるようになりましたが、以前はロシアの選手が出てくると、スポーツ競技ということを忘れて、うっとりと眺めたものでした。

 皆さんは、ロシアにはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

「巨大な国」「大統領が絶対的な力を持っている」「歴史的に見ても、領土を広げる野心が強い」――といった印象でしょうか。確かにそのような面はありますが、一方でロシア人の精神生活面にはあまりイメージが湧かないのではないでしょうか。

 実は、彼らは芸術の世界でも世界をリードし続けている国のひとつです。クラシック・バレエも盛んで、レベルも高いです。そのため、フィギュアスケート選手は、トレーニングの一環として最高のバレエ教育を受け、高い芸術性も身につけるのです。

ロシアとフィンランドの“因縁の歴史”

 そんなロシアは、オーケストラもまた世界のトップレベルです。1923年創刊の英国の老舗音楽雑誌「グラモフォン」は、世界のオーケストラのランキングを発表していますが、ベスト20にロシアのオーケストラが3つも入っています。もちろん、このベスト20に入らなかったとしても、人々の心を揺さぶる個性豊かなオーケストラはたくさんあります。

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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