まず、「受入実績や活用状況の公表」だが、両方を公表している団体(自治体)は1138団体で全体の63.6%。前年度の1040団体から大幅に増えた。一方で、いずれも公表していない団体が199団体(11.1%)ある。これは納税者に対して失礼だろう。
寄付者(納税者)に、寄付金を充当する事業の進捗状況・成果まで報告している団体は499団体(27.9%)にとどまっている。本来なら、こうしたきめ細かな情報公開が必要だと思うが、3割弱しかないのが現状だ。
驚くのは「ふるさと納税の募集や受入等に伴う経費」の実態だ。返礼品の調達額は1406億1500万円と受入額の38.5%を占め、返礼品の送付にかかる費用240億9800万円(6.6%)を合わせると45.1%が返礼品関連に費やされている。そのほか広報、決済、事務にかかる経費などがあり、総額で2027億700万円、受入額の55.5%が経費となっている。せっかく地方の活性化のためにと思って寄付したのに、生かされているのは半分以下ということだ。早急な見直しが必要ではないだろうか。
実際にどんな事業に生かされているのか
では、寄付したおカネはいったい、どんなかたちで活用されているのだろうか。今回の調査結果には、「ふるさと納税の使途について、地域の実情に応じて創意工夫を図り、明確化することで、事業の財源を確保した具体例」が紹介されている。いくつかピックアップしてみた。
・岐阜県多治見市 地域の魅力である美濃焼の後継者をはじめ、陶磁器デザイナー、クラフト作家、陶芸家を幅広く育成
・北海道新得町 町内小学校の子供達が参加する植栽事業などを通じて、低炭素化や環境に配慮したまちづくりを実施
・岩手県大槌町 東日本大震災津波により流失した大槌駅の再建により鉄路再建を目指す
・大阪府吹田市 国立循環器病研究センターに入院する小児患者の家族が低廉な料金で宿泊できる「おおさか・すいたハウス」の移転に必要な費用を支援
このように使途がハッキリしていて、しかも地域の活性化につながるケースであれば、寄付した側も納得できるのではないだろうか。こまめな情報公開が望まれるところだ。
過度な返礼品を見直すことを求めた総務大臣通知後も、返礼品の内容を見直す意向がないと指摘された12の自治体名を挙げておきたい。
「返礼割合3割超の返礼品及び地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村で、平成30年8月までに見直す意向がなく、平成29年度受入額が10億円以上の市区町村」
茨城県境町(21.6億円)、岐阜県関市(14.1億円)、静岡県小山町(27.4億円)、滋賀県近江八幡市(17.7億円)、大阪府泉佐野市(135.3億円)、福岡県宗像市(15.6億円)、福岡県上毛町(12.1億円)、佐賀県唐津市(43.9億円)、佐賀県嬉野市(26.7億円)、佐賀県基山町(10.9億円)、佐賀県みやき町(72.2億円)、大分県佐伯市(13.5億円)である。
名指しされた自治体が今後どのような対応をするのか。そして納税者がどんな反応を示すのか。ふるさと納税の存続にもかかわる問題だ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)