不正が続いたスバルでは、吉永泰之社長(当時)が代表権のない会長に退きCEO職も返上した。
今回、日産で新たな不正が明らかになったことで、改めて西川社長の責任問題がクローズアップされるだろう。先の株主総会で、不正に関する責任問題を問う質問があったが、ゴーン会長は「トップは西川氏」と述べ、一度も謝罪せずに押し通した。
データ改竄や不正が次々と明らかになった神戸製鋼所、三菱マテリアル、スバルは、トップが引責辞任した。東レは子会社の社長が辞めている。日産だけが、いまだにトップの責任を明確にしていない。
日産の株価は7月9日午後に急落。999.5円まで売られ、17年4月以来の1000円割れとなった。8月6日現在の株価は1049円。トヨタ自動車は7133円、ホンダは3392円。スズキは8月3日に急騰し、一時7285円(832円高)の上場来高値を更新し、8月6日の終値は7327円(322円高)。7355円をつけたこともあった。スバルも3232円で、日産の株価の3倍である。日産の株価だけが、こうも安いのは、投資家が経営トップに強い不満を持っている証左だろう。
深く反省してはいない?
日産の検査不備は日常的に行われていた。それなのに、不祥事が発覚した昨年秋の最初の記者会見で、広報部長などマネージャークラスが「不具合はまれ」と居直った。問題が社内で判明してから10日後の17年9月29日夜、国土交通省で日産が会見した時のことだ。
企画・監理部の人間が、自動車の安全性について「無資格の従業員が行ったとはいえ、出荷に必要な検査項目はすべて行っている」と説明。「この検査で不具合が見つかることはまれだ」とまで言い切った。週明けには、社運をかけたEV「新型リーフ」の発売を控えていたため、強気の発言をしなければならなかったとみられるが、初動を間違えたといえる。
会見をした担当者は柄物のワイシャツを着ており、およそ謝罪のための記者会見に臨む服装ではないとの批判が噴出した。担当役員が出てこなかったことから「日産がこの会見を軽視していたことがわかる」と、クレーム処理に詳しいアナリストは分析した。しかも、出てきた2人は「国交省の指摘で(無資格検査を)初めて知った」と言い放った。その後に、無資格検査が全工場で常態化していたことが発覚しているのだから、軽率な会見だったうえに、出席する人選を間違えたことが致命傷になった。