「パーキンソンの法則」というものがある。英国の歴史学者シリル・パーキンソンが同国の官僚制を観察した結果、「役人の数は仕事の量にかかわらず年々増加していく」と説いた。同氏によれば、このような結果は以下の2つの要因によってもたらされる。
(1)役人はライバルではなく部下が増えることを望む
(2)役人は相互に仕事をつくり合う
官民ファンドには「パーキンソンの法則」がピッタリ当てはまる。現在14あるファンドのうち12が、第2次安倍政権発足後に設立・改組された。各省庁の官僚たちが相互に仕事をつくり合ってきたからだ。官民ファンドに国が出資・融資した金額は2018年3月末時点で計8567億円。ファンドが資金を調達するうえで政府が元本の返済や利子の支払いを保証した金額は、計2兆9694億円に達する。
会計検査院は4月13日、14ファンドの検査結果を初めて公表した。それによると17年3月末時点で全体の4割強にあたる6つのファンドが、投融資に見合うだけの資金の回収ができておらず、実質的に損失を抱えているとされる。
経済産業省所管の海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は17件、310億円の投資で44億円の損失が生じていた。文部科学省所管の大学発ベンチャーを支援する官民イノベーションプログラムには国が1000億円を出資したが、同プログラムが投資した額は、そのわずか4.6%の46億円。しかも、4事業合計で13億円の損失を出した。中小企業基盤整備機構(経済産業省所管)は55億円、海外交通・都市開発事業支援機構(国土交通省所管)は18億円、農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE、農林水産省所管)は10億円、科学技術振興機構(文部科学省所管)は2億円のマイナスだった。
最大の官民ファンドである経産省所管の産業革新機構は114件を手がけ、1兆2483億円の利益を得た。半導体大手ルネサスエレクトロニクスの含み益が大きい。12年に1株120円でルネサス株を取得、株価上昇で含み益が膨らんだ。投資分を回収するため今年4月26日、同社株の12.2%分を売却、出資比率は33.4%まで下がった。ただ、ベンチャー投資案件の多くは苦戦している。投資先企業の解散などで事実上、撤退したケースもある。
各ファンドは個別の投資案件の利益及び損失を公表していない。公開しなければ、それぞれのファンドの存在意義はわからない。ブラックボックスに入ったまま、という問題点は大きい。