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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

日産「ノート」が新車販売1位になった理由…e-POWERが市場勢力図を変える可能性

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季

売り手の予想に反してエポック・メーキングな存在に

 このように、市場の反応を見て搭載した新たな技術の有用性に気づかされる例は過去にもあるそうだ。

「いまや当たり前となっている一眼レフカメラのオートフォーカス機能も、ミノルタ(現コニカミノルタ)が1985年2月にα‐7000で搭載してヒットさせたことがきっかけでした。当初は高齢者から興味が持たれ、それが一般ユーザーにも思いのほか便利だということでスタンダードになっていきました。こういうことはマーケティングの世界ではたまに起こることです。e-POWERで可能になったワンペダル型ドライブに関しても、今後スタンダードになっていく可能性は十分にあります」(同)

 その理由の一つとして挙げられるのが、ユーザーが車の買い替え時に再びe-POWER搭載車を選ぶ可能性が高まることだ。

「同じ日産車のリーフやセレナなどにもe-POWERが展開されるようになりましたが、一度このワンペダル型のイージードライブに慣れると、従来の車の操作に戸惑うこともあるそうです。オートマ車に慣れた人がマニュアル車の運転を難しく感じるのと同じですね。現状、この技術は競合他社にはないものなので、日産はe-POWERユーザーをうまく囲い込んでいける可能性があります。これが続けば、市場の勢力図も大きく変わっていくかもしれません」(同)

 日産では今年7月にも、出荷前の新車に行う排ガスや燃費に関する測定値検査での不正が明らかになった。企業の不祥事は売上に大きな影響を及ぼすが「技術の日産」の底力を見せた後だけに、消費者がこれをどうとらえるのか。今後のノートならびに日産車の売上がどう推移するかが注目される。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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