メンタルヘルスの分野で欧米から大きく遅れている日本
メンタルヘルスの分野では、日本は欧米に比べて数十年遅れている。アメリカでは1940年代から心理職は国家資格となっている。先進国では心理職が国家資格であるのは当たり前だが、日本では今年9月に、ようやく国家資格の「公認心理師」の試験が行われ、日本で初めて国家資格を持つ心理職が誕生する。
今まで、臨床心理士などの心理職は民間資格であって、国家資格ではなかったのだ。また、欧米ではオンラインとICTを活用した心理支援の仕組みが数年前から始まっていた。欧米から大きく遅れた日本のメンタルヘルスだが、今回、下山教授が推進するココロ・ストレッチは、欧米よりも先を行く仕組みになるという。
「メンタルヘルスの第二世代は、専門家が現場に行く(アウトリーチ)スタイルです。クリニックに来ることができない患者さんに、積極的に専門家の側からサービスを提供する形です。現在はオンラインによって、それが可能になりました。欧米がこの方法を取り入れています。しかし、システムで対応すれば、どうしても機械的な対応となり、長続きしないという弱点もありました。
そして、次に出てきたのが第三世代です。AIやロボットを活用することで、患者さんが自主的に自分のメンタルをモニターできるようにし、自分でメンタルを強くするように導くことができます。ココロ・ストレッチは、まさに第三世代のメンタルケアの方法です」(同)
下山教授は昨年、AIを使ったメンタルケアのアプリ「いっぷく堂」を開発・一般公開し、検証を重ねてきた。また、大手メーカーと組んで、お掃除ロボットにAIを入れて、メンタルケアのサービスを提供するテストも行ってきた。
今回のココロ・ストレッチでは、さらに一歩進め、ゲーミフィケーション(課題解決にゲームの要素や特徴を取り入れること)も使い、利用者が楽しみながら、メンタルを強くさせる仕組みも導入した。このアイデアは、東日本大震災の経験から生まれたという。
「東日本大震災の時、私は被災地に赴き、子供たちのメンタルケアをしていました。その時、子供たちがスマートフォンでゲームをしているのを見て、我々のノウハウがゲームやインターネットで提供できれば、自主的に取り組んでもらえるのではないかと閃いたのです」(同)