がんばり抜く力など、非認知能力と学力に相関があることが判明
もう一つ画期的なのが、自制心や自己効力感、勤勉性ややり抜く力といった、非認知能力を世界的に広く使われている指標を使って調べ、学力との相関を測っている点だ。
その結果、アクティブラーニングなどの問題解決型の学びや非認知能力(特に自己効力感)と、学力には正の相関があるという結果が導き出されている。また、各学年を通じて、教員が「認めてくれた」「どちらかといえば、認めてくれた」という実感を持つ子供ほど、自分自身について「難しいことでも失敗をおそれずに挑戦している」と回答する傾向があるなど、非認知能力が子ども同士または子どもと教師との関わりのなかで培われることも示されている。
今、教育関係者の間では非認知能力が注目されているが、30万人というビッグデータで、非認知能力と学力の相関が確認されたことで、どのような働きかけをすれば、子どもの非認知能力を上げることができるのかという研究が進むことも期待される。
OECDも注目、埼玉から世界に広がる可能性も
この調査は徐々に広がり始めていて、広島県福山市、福島県郡山市、西会津町で実施され、来年度(平成31年度)から、福島県全体で実施予定だ。
さらに、世界35カ国が加盟するOECDも、この調査に関心を寄せている。「ミスターPISA」こと、シュライヒャーOECD教育・スキル局長が、昨年7月に来日した際に埼玉県を訪問し、埼玉学調を高く評価して連携の必要性を明言したという。
OECDも注目していることから、埼玉学調の調査結果は、2020年度からの大学入試改革に始まる日本の教育改革の方向性だけにとどまらず、世界の教育政策にも良い影響を与える可能性が高いと筆者は考える。
大阪市長が全国学力テストの結果を教員の給与に反映するという方針を打ち出し波紋が広がっているが、教育者の仕事は「一人ひとりの子どもを伸ばす」ということのはず。教師自身が目先の点数に翻弄されるのではなく、本来の仕事に向かえるように、この調査をぜひ良い意味で活用してほしいものだ。
(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト)