ローソンは昨年9月から、ブレンドコーヒー(Sサイズ)を従来と比べ15秒早く提供できる新型コーヒーマシンの導入を始めた。新型も旧型と同様にエスプレッソ式となる。旧型では40秒かかっていたが、新型だと25秒で抽出できるという。カフェラテ(Mサイズ)は29秒だったが、9秒早い20秒となった。
ローソンのマチカフェは、店員がマシンでいれて客にコーヒーを手渡しすることを売りとしている(一部の店舗ではセルフ式を採用)。手渡しにすることで店員と客の間に交流が生まれやすくなり、それによりブランドと客の絆が深まることを期待した。店員の作業負担などを考慮してセルフ式を採用しているセブンやファミマとは対照的といえるだろう。
ただ、ローソンのこうしたサービス方法は提供するのに時間がかかるため、それによりレジが混雑し、それに不満を持つ人も少なくない。「待ちカフェ」と揶揄されることもある。そこで、より早い提供が可能な新型マシンを導入することで待ち時間を短縮し、客の不満の解消を図る考えだ。
コンビニコーヒーの拡大は、コーヒー市場を活性化させた。全日本コーヒー協会によると、17年のコーヒーの国内消費量は46.4万トン。前年からは1.7%減ったが、ここ数年は増加傾向にある。5年前の12年からは8%以上増えており、同協会はコンビニコーヒーの販売拡大がひとつの要因と分析している。
大手コンビニ各社としては、集客が見込めるいれたてコーヒーを進化させることで客足を回復させたいところだ。
というのも近年、セブン、ファミマ、ローソンの客数は、それぞれ減少傾向にあるためだ。セブンの17年度の客数は前年度比で約1%減り(16年度は微増)マイナスに転じた。ファミマは約2%減り、ローソンは約1%減った。これまで右肩上がりで成長してきた3社も、近年は集客に苦戦し成長に陰りが見える。
3社の国内コンビニ店舗数は合計で5万店を超えるまで成長したが、コンビニ店舗数は飽和に達しつつあるとの声は少なくない。近年は、コンビニ同士の競争はもちろん、ドラッグストアやスーパーマーケットなど異業種との競争も激しさを増している。今まで以上に1店1店の集客力を強化していくことが求められている。
そうしたなか、日常的な利用が見込めるいれたてコーヒーは、客足回復の切り札になり得る。また、近年は各社とも店内で飲食できる「イートイン」を備える店舗を増やしているが、いれたてコーヒーはそれとも相性が良い。いれたてコーヒーとイートインを組み合わせることで、日頃喫茶店を利用する人などを取り込むことも期待できるだろう。
ファミマはコーヒーマシンを刷新することで巻き返しを図りたい考えだ。先述したとおり、17年度の客数の落ち込みは3社の中ではファミマが最悪だった。また、日販(1店舗の1日当たり売上高)は、ファミマが一番低い。ローソンとの差はわずかだが、セブンとは10万円以上の開きがある。いれたてコーヒーを強化することで底上げしたいところだろう。刷新後のコーヒーの味に注目したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。