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オリンパス社長、中国での贈賄疑惑を指摘する社内弁護士に自宅待機の懲戒処分

文=山口義正/ジャーナリスト
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 深セン問題では法務部の一部社員は自らの役割を果たそうと執拗に食い下がっており、その点から見れば、社員の意識も変わりつつあるのだろう。損失隠し事件の発覚以降、筆者のもとに多くのオリンパス社員から内部告発が届くようになったのは、その表れといえる。筆者がオリンパスの現状を伝える記事をしばらく書かないと「あなたたちの監視の目が行き届かなくなった」として、社員からお叱りのメールや手紙を頂戴するほどだ。

 しかし企業統治のシステムは働かなかった。損失隠し事件当時の複数の幹部が経営の中枢に残っているうえ、一部の社外取締役や社外監査役が問題を握りつぶそうとした。のちに深セン問題について社内調査委員会が調査を始めると、彼らはころりと態度を変えたという。

 社外取締役が法律が期待する役割を誠実に果たしたかと問われれば、答えはノーだ。彼らは決して暗愚なわけではなく、オリンパスの抱える企業文化の問題を正確に理解していることは、さまざまな証言や資料で明らかだ。しかし、一部の社外取締役や監査役は問題の通報窓口としての役割こそ果たしたが、その後は積極的に問題に対処した痕跡はない。みずみずしい経営感覚やフットワークの軽さを失った老人でしかない。

 オリンパスのような一筋縄ではいかない企業の社外取締役を務めるには、みな年を取り過ぎているのかもしれない。オリンパスでは社外取締役がしばしば講演会や冊子などで企業統治が改善したと訴えているが、深セン問題の法的なリスクがいかに高いかを社外取締役らに懇切丁寧に説明した社内弁護士に自宅待機の懲戒処分を科したのは、実は笹宏行社長だった。「社外取締役の究極的な仕事は、社長に引導を渡すこと」といわれるが、社外取締役は社長にブレーキをかけることさえできていない。

 なぜ、こうなるのか。深セン問題で説明に当たったプロパーの役員は、この問題に深く関わった人物で、これでは正しい情報が社外取締役に伝わらない。問題の当事者だけが情報を共有し合い、出世の階段を駆け上がっていく点は、損失隠し事件のときと比べて何も変わっていないといわれても仕方ない。

 オリンパスのこうした企業体質を株式市場や金融市場は理解し始めている。機関投資家のアナリストやオリンパスの主力取引銀行はオリンパスについて「ああいう会社だから」と突き放したような言い方をする。7年前のオリンパスがそうであったように、こういう会社は何か問題が発生すると、直接金融にも間接金融にもアクセスできなくなって降参するしかなくなる。
(文=山口義正/ジャーナリスト)

●山口義正
ジャーナリスト。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞記者などを経てフリージャーナリスト。オリンパスの損失隠しをスクープし、12年に雑誌ジャーナリズム大賞受賞。著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)

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