当サイトではこれまで、オリンパスが抱える中国・深セン工場の贈賄疑惑について触れてきた。
経緯を簡単に振り返ってみると、オリンパスが深セン工場で発生した理論在庫問題の処理に困り、反社会的勢力とみられる経営コンサルタントに解決を依頼したことがすべての始まりである。その報酬は、現金と深セン工場の社員寮売却をセットにした極端な成功報酬型になっていたが、ゴーサインを出した本社の意向に反し、オリンパスの深セン子会社「OSZ」はこの契約には問題があるとして報酬の支払いを留保した。
これを受け、この経営コンサルタントがOSZに対し支払いを求めて訴えを起こし、OSZは敗訴したが、OSZとコンサルタントが契約を交わしたことに対しては、有力法律事務所から「米海外腐敗行為防止法(FCPA) に違反する恐れが高く、契約を解除したほうがいい」という意見書が出されていた。
オリンパスの社員弁護士たちも執拗にアラームを鳴らしていたが、本稿ではオリンパスの組織編成がどう改められたのか、そして、それがなぜ機能しないのかを考えたい。
相変わらずの隠蔽体質
オリンパス社内の業務や決裁の流れを見る限り、問題を見つけ出す仕組みはできあがっているように思える。現地法人、地域統括会社、本社のそれぞれに法務部や総務部、人事部などを置いて各部署の立場から問題点を指摘し合い、不完全ながら相互チェックや相互監視が可能なシステムになっているからだ。2011年に発覚した損失隠し事件後の組織改編で、各事業部門を縦糸にし、法務部や総務部、人事部などのバックオフィス部門を横糸として織り込む「マトリックス経営」を取り入れた結果だ。
しかし、問題の存在が明らかになると、その解決を図るよりも、問題を指摘した役職を排除する方向に働くばかりで、自浄能力が働かなくなって暴走を始める。関係者によると、オリンパスは深セン問題に関して、一部の幹部にわざわざ秘密保持の誓約書の提出まで求めているというから、隠蔽体質を疑われても仕方がない。
こうして、気がついたときには後戻りできないほど問題が深刻化するという点では、損失隠し事件と今回の深セン問題は酷似している。
市場で広がる不信
損失隠し事件の際に立ち上げられた第三者委員会はその報告書のなかで、オリンパスが抱えるさまざまな問題点を指摘し、組織上の問題点の一つとして、オリンパスの法務部が独立した立場から積極的に問題と向き合おうとしなかったことを明確に挙げている。