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赤字転落の吉野家HD、勝ちモデルの崩壊…「牛丼」集中と非正規雇用依存の限界

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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赤字転落の吉野家HD、勝ちモデルの崩壊…「牛丼」集中と非正規雇用依存の限界の画像1吉野家の牛丼

 牛丼でおなじみの吉野家ホールディングス(HD)が、ここへきて人件費の高騰に直面している。

 吉野家HDはデフレ経済(広範な物価が持続的に下落すること)下での勝ち組企業だ。デフレが進行するということは、経済全体で需要が後退することを意味する。バブル崩壊後、企業経営者は株式や不動産価格の急落に直面し、リスクを取ることを極端に避けてきた。そのため、過去20年間、実質ベースでみた賃金は増えていない。そのなかで吉野家HDは低価格を重視した。それが多くのファンを獲得し、高収益につながった。

 しかし、足許、人件費の増加が同社の収益を減少させている。吉野家HDの牛丼低価格戦略は限界を迎えたともいえる。今後、同社は高価格帯の外食事業の展開など構造改革を進めなければならないだろう。

 経営のリスクが増えるなか、吉野家HDは強みを生かしていくことに注力するとよいだろう。そのひとつが立地だ。同社は“吉呑み”のサービスを始めているが、駅前店舗などを活かして、“ひとり呑み”の需要を取り込むことはひとつの着眼点だ。ひとり焼肉の登場にあるように、ひとりで食事をしたい人は多い。そうした需要を発掘し、取り込んでいくことが吉野家のさらなる成長に不可欠だ。同社が経済環境やライフスタイルの変化を見極めつつ、どのように新しい取り組みを進めて収益性を改善させることができるかに注目したい。

牛丼に的を絞った吉野家HD

 吉野家HDは、牛丼に代表される低価格のメニューを提供する飲食店事業を中核とする企業である。デフレ経済が進行するなか、この価格の低さが多くの消費者の心をつかんだ。その点で吉野家HDは、物価が持続的に下落する経済環境のなかで人々が価格の低さをより重視するようになる、という変化に目をつけて需要を取り込むことに成功した。それが同社を“デフレの勝ち組企業”と評する理由だ。

 吉野家HDは外食産業のなかでも特異な存在だ。なぜなら、同社は提供するメニューをほぼ牛丼に絞ってきたからだ(現在では、うどんの「はなまる」、ステーキのアークミール、寿司の京樽も傘下に保有)。一般的には、多様な消費者の好みに対応しようとしてメニューを多角化したほうが良いとの考えが支持されやすい。それはプロダクト・ポートフォリオ(提供する商品の組み合わせ)の分散を重視することにほかならない。

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