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小笠原泰「日本は大丈夫か」

安倍政権、就活ルール“強制化”…企業は文系の大学生の学業を「まったく評価していない」

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 卒業要件が厳しくない今の大学では、こうなるのは当然である。卒業要件を厳しくして留年者が増えると、文科省から指導を受け、受験生も減ることになるので、大学は卒業要件を厳しくはしない。この傾向は偏差値の低い大学ほど顕著となる。

 文系に限るが、そもそも現在の大学生は、4年次の前期は就活も含めて忙しく、ほとんど学業に集中していない。それでは、就職先も決まった後期は学業に集中するかといえば、多くの学生は、卒業が計算できる最低レベルの単位数しかとらない。または、卒業の怪しい学生は、可能な限り多くの講義に登録してひたすら受講をこなす。このように、4年次の学生は前期に学業に専念できなかった分を取り戻すために、後期にいっそう勉学に集中するわけではない。それは大学も認めているところである。

 就活ルール廃止への反対の理由は、今でもインターンが盛んになり3年次でも忙しいのに、その上に就活が前倒しされると3年次でもさらに学業に専念できなくなるということである。それでは、就活の始まる前の3年次までの文系学生は、学業に専念しているのであろうか。

 企業が採用に当たって何を学んだかや成績を真剣には見ていないことを、先輩やOB/OGから聞いている学生は、必要なのはSPIに代表される企業が課すテストや、「学生時代に何を成し遂げたか」であることを知っているので、サークルやボランティア活動に注力する。それに加えて、夜遅くまでアルバイトにかなりの時間を割くので、学業に専念する動機づけだけではなく、時間もないのが現実であろう。学業への専念の優先順位は低いのである。おそらく、まじめに大学の講義を聞いているのは、右も左もわからない1年次から、よくて2年次の前半くらいまでではないだろうか。

それでも学生は学業には集中しない

 大学が政府にすがって就活ルールを定めても、学生は学業には集中しない。問題の本質は、特に文系にあっては、学業の時間をルールで強制的に確保すればよいという問題ではないのである。

 大学が企業から必要とされるように自助努力をしようにも、それはかなり難しいのではないか。できることといえば、現在同様に受験生をより多く集めるために、就職支援機能の充実と就職実績を上げることになる。

 また、インターンを選考とは関係のない社会体験の場とするのであれば、ドイツのダブルシステム(週の何日かは企業で働く)のように卒業要件にインターンを明確に組み込むべきである。企業としては負荷がかかるため、受け入れるかは疑問ではあるが、本音と建て前があまりに乖離する現在のインターン制度は中途半端である。

 次回は、当事者である学生の状況を見てみたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)

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