経団連の中西宏明会長が9月3日の記者会見で、就職説明会を3月、選考面接解禁を6月、内定は10月としている現在の就活ルールは2020年春入社までの適用とし、それ以降は廃止する意向を表明した。そして10月9日には経団連はその廃止を正式発表した。1953年に始まった「就職協定」以来の新卒採用活動のルールは廃止されることになる。
一方、中西会長も示唆していたが、2021年春入社以降の学生を対象とするルールは、政府が主導して検討することとなった。10月29日に開催された「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議(議長・古谷一之官房副長官補)」(以下、連絡会議)の第2回会合を経て、政府は「混乱を避けるため」という葵の御紋の印籠をかざして、2021年春入社の学生を対象とした就活ルールを定めた。報道によると、企業による学生への説明会を大学3年生の3月、面接の解禁を大学4年生の6月からとする現行の日程を維持することを確認したという。さらに経団連加盟企業以外の大手企業や新興企業、外資系企業にも周知するとしている。
政府は経済団体(440の経済団体・業界団体)を通じて、会員企業にルールを守るよう周知するというが、当然、経団連も含まれるのであろう。これは、経団連に対する、安倍政権の得意技である“忖度をしろ”というメッセージであろう。また、インターンシップ(就業体験)に関する規定は未定としているが、現実離れした「就活とは切り離すべきだ」との考えを繰り返している。現実を直視する気はさらさらないという強い決意表明である。
政府は、就職協定廃止後の2021年春卒業生に関しては、現行ルールの延長で“とりあえず社会の不安を除き”、2022年春卒業生(現在の1年生)以降については、来年度の2019年度以降に改めて決定するとしている。しかし、学生を「混乱させないよう」にという錦の御旗を使い、日程を現行から変えない可能性が高いことを発表文書で示している。これは、何事も「混乱を避けるため」と称して、とりあえず現状維持で時間を稼ぐという、相も変わらぬ日本政治の常套手段である。