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垣田達哉「もうダマされない」

小麦粉の売渡価格、10月から19%も値上がり、過去最大規模…今が買い時か

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「Getty Images」より

 10月1日から小麦粉売渡価格が19.0%も値上がりする。私たちの生活に直接影響してくるのは年末年始頃になるが、かつてない値上げになりそうだ。家庭用小麦粉をはじめとして、小麦粉製品や外食産業、中食産業(弁当・総菜等)までかなり広範囲にわたって、値上げラッシュが始まるだろう。

 輸入小麦は、すべて政府が一括して仕入れ、マークアップ(政府管理経費及び国内産小麦生産振興対策に充当)を加算して民間の製粉会社や醤油メーカー等に卸す仕組みになっている。その卸価格を売渡価格という。年1回の改定が、2007年からは年2回に変更されている。

 売渡価格は製粉会社にとっては原材料の仕入価格になるので、製粉会社の製造原価が半年ごとに増減する。そのため、製粉会社も半年ごとに自社製品(家庭用と業務用)の販売価格を改定することになる。売渡価格の増減が少ない時は改定しないこともあるが、ほとんどの場合改定されている。

 9月8日、輸入小麦の21年下期(10月~22年3月売渡分)の政府(農林水産省)売渡価格が、19.0%も値上げされることが発表された。前期(21年上期4月~9月売渡分)の売渡価格1トン当たり51,930円が、10月1日からは19.0%値上げされ61,820円になった。これは、08年上期の30.0%、11年上期の18.0%以来の大幅なものだ。

 08年は、下期も売渡価格が10%値上げされているので、1年間で42.7%(売渡価格1トン当たり53,270円から76,030円)も高騰した。その結果、小麦粉1kg当たりの小売価格は、1年間で43円、22.8%(07年の189円が08年には232円)も高くなった。

 今年は、上期(4月1日以降売渡、7月1日から家庭用小麦粉値上げ分)が5.5%値上げされた影響で、小麦粉の小売価格が6月の264円から7月には268円、8月には273円と2カ月間で9円も高くなった。上期に加え、下期も19.0%値上がりするので、1年間で売渡価格が49,210円から61,820円と25.6%も高くなる。

 では、年末年始は、どのくらい高くなるだろうか。

※小売価格は、総務省「小売物価統計調査」東京都区部でのスーパー等の小売店の販売価格

農水省の試算でも過去最大の値上げ

 農水省は、今回の19%の値上げが小麦粉製品にどれだけ影響するかを試算している。例えば「家庭用小麦粉(薄力粉)1kgは268円+14.1円(5.3%)の値上げ」「食パン1斤(400g)は174円+2.3円(+1.3%)」と予測している(表1)。これは、農水省が小麦粉を試算し始めた17年下期以来、過去最高の値上げ額・値上げ率となる。

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 今回の売渡価格の値上げが小売価格に反映されるのは、早ければ12月、遅くても来年1月頃になるが、農水省の試算通りとしても、268円が14円も上がり282円になる。11~12月の小麦粉の小売価格がどの程度になっているかわからないが、8月の小売価格の273円から5%上がるとすると287円になる。年末年始に14円も値上げされるのは、消費者にとってはかなり大きな負担となる。もちろん、小麦粉だけでなく、小麦粉関連商品や外食もおそらく値上げされる。

 全国2人以上の世帯の食料支出は、2020年1年間で962,375円、内小麦粉関連製品(外食の小麦粉関連も含む)の合計は85,310円(7,109円/月)である。小麦粉製品で、平均5%値上げされると年間4,266円、10%値上げだと8,532円の出費増になる(支出金額は、総務省「家計調査」より)。

小売価格は値上げ率以上に上がる

 私たち消費者に直結する小売価格は、かなり上昇する可能性が高い。その理由は、過去の例を見ると「売渡価格が下がっても、実際の小売価格はそれほど下がらず、売渡価格が上がると、その分しっかり小売価格は上がっている」からだ。

 政府が値上げした時(17年下、18年上、18年下、20年上、21年上)は、ほぼ政府の値上げ幅と同じ程度値上げしている。ところが、値下げした時(19年上・下、20年下)は、政府の値下げ幅より相当小さい値下げになっている。特に、19年下期に売渡価格が8.7%も下がっているのに、製粉会社の値下げ幅は最大で2%だ。これでは、いくら売渡価格が下がっても、小売価格は下がることはない。

 実際、20年上期の売渡価格(51,420円/1t)は、08年の過去最高値(76,030円/1t)より24,610円も安いのに、小売価格は08年(232円)より20年(266円)のほうが34円も高くなっている。

 製粉会社は、年2回の価格改定時に「小麦粉を入れる包装袋や光熱費等、諸物価高騰の折」ということで、小麦以外の経費も加味するので小売価格は安くならないのだ。農水省は、小麦粉関連製品の小売価格に占める原料小麦代金の割合を公表しているが、うどんや中華そばは、1%にすぎない。カップ麺でも2%、食パンやゆでうどんでも7%程度だ。原材料の100%が小麦である小麦粉でさえ26%しかない(表2)。いかに製造加工費や人件費等の割合が高いかがわかる。

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いつからどのくらい上がるのか

 価格改定は、家庭用より業務用のほうが早い。業務用小麦粉製品の価格改定の発表は、例年10月11日頃である。価格が改定されるのは「値下げ時は1月10日頃の納品分から、値上げ時は12月20日納品分から」なので、今回も早ければ12月20日過ぎから小売価格や外食料金に反映されていくだろう。

 ただし、在庫が2カ月分程度しかない場合は、11月後半くらいから値上げされる可能性もある。そうなると、業務用が使われる外食産業や中食産業などでは、12月に値上げされる可能性が高い。あるいは、価格は据え置きで、個数や容量を減らすといったステルス値上げが行われるかもしれない。

 値上げ額が一番大きいのは小麦粉だが、その他にも小麦粉が使われている食品(食パンなどのパン類、うどん、そば、中華麺、カップ麺などの麺類、クッキーなどの菓子類、ピザ等)は値上げされるだろう。パスタ類は、商品そのものが輸入されているものが多いので、あまり影響されないはずだが、世界的に小麦粉の価格は上がっているので、遅れて値上げされる可能性はある。

 外食産業や中食産業、ベーカリー、宅配ピザ等、小麦粉製品の使用率が高いメニューや商品も、何らかの方法で実質値上げをせざるを得ないだろう。

 一方、家庭用小麦粉や小麦粉製品の価格改定の発表は、値上げ時は10月下旬か、11月初め。改定時期は、ここ数年見ていると「値下げ時は翌年2月1日出荷分より、値上げ時は翌年1月4日出荷分より」となっているので、小売店で販売される小麦粉は、年明けから値上げされるだろう。ただし、これもメーカーの在庫次第では、今年の12月後半から値上げされるかもしれない。

 家庭用小麦粉の売渡価格推移を見ると、17年下期から21年上期まで、値上げ時の製粉会社の小麦粉の値上げ率は、農水省の試算より高くなっている。値下げ時は、試算よりも低い。今回も、製粉会社の小麦粉価格の値上げ率は、農水省の試算(5.3%)より高くなるだろう。おそらく6~10%程度は値上がりする可能性がある。その他の経費が膨れ上がっているようだと、10%以上の値上げになるかもしれない。

 仮に、8月の小売価格273円の10%値上げとなると300円、15%値上げの場合は314円になる。来年は、小麦粉1袋1kgが300円台に突入する可能性が高い。年末年始は、小売店でも外食産業や中食産業でも、小麦粉製品の過去最高の値上げラッシュになりそうだ。

 10月下旬か11月初めの値上げ発表で、小麦粉の値上げ率が高くなると、年内は品薄状態になるかもしれない。家庭用小麦粉(薄力粉)の賞味期間は1年程度ある。比較的長持ちする食品なので、今が買い時かもしれない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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