売上金が“失効”するという表現自体がおかしい
メルカリの本人確認や売上金をめぐる不満の声は、ほかのユーザーからも相次いでおり、今年の8月頃から特に表面化したようだ。
こうした本人確認の意図についてメルカリ広報に取材すると、次のような回答が返ってきた。
「メルカリでは、すべてのお客様に安心・安全にご利用いただけるプラットフォーム運営のため、利用規約違反や悪質な行為などを行う利用者の排除に尽力しております。そのなかで、以前より、登録情報や利用状況などを基に、随時お客さまにご本人確認をお願いしております。
このようななかで、一部のお客さまに長い時間お待たせしてしまいましたこと、また弊社の説明が不十分でお客さまを不安にさせてしまったことについては、誠に申し訳ございません。本人確認をお願いしたお客さまやお問い合わせをいただきましたお客さまにつきましては、個別に対応させていただいております。
なお、ご本人確認のための利用制限中に振込申請期限を迎えて売上金が失効した場合にも、本人確認の結果、不正な取引がないことが確認され次第、売上金は再付与しております」(メルカリ広報)
また、一般的に、本人確認にどれくらいの日数を要するのかという問いに対しては、「個々の事案により長さが異なり、一概にお伝えすることが難しい」(同)という。
メルカリは、11月8日に開いた決算説明会の質疑応答においても「本人確認を強化していることは事実」と明かしているが、ここにはどのような背景があるのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に話を聞いた。
「メルカリでは昨年12月に仕様変更があり、ユーザーは初回出品の際に住所と氏名、生年月日を登録することが義務となりました。本人確認書類の提出を複数回にわたって要求されたり、提出してもメルカリから返事が来なかったりといったユーザーが増え始めたのもこの時期からですが、本人確認のトラブル自体は前々からずっと続いていました。
そこに利用制限や売上金の失効といった別の問題が絡み、今回のように話が大きくなっているのですが、そもそも私は“失効”というメルカリの言葉遣いに違和感があります。ユーザーがメルカリで発生させた売上金は確かに存在しており、ポイントみたいに消えるわけではないはずです。それが失効するというのは、ユーザーの売上金をメルカリが横領するつもりなのかと疑われかねない、的外れな表現でしょう。
そしてメルカリは、今年6月に東証マザーズに上場しており、警察や金融庁からの監視の目が強くなっているのだと思われます。1月に仮想通貨NEM(ネム)の流出騒ぎがありましたが、あれはコインチェック社が、自己資金と顧客からの預かり資金をごちゃ混ぜにして管理していたのがひとつの原因でした。メルカリも、自己資金とユーザーの売上金をどのように切り分けているのかなど、あれこれ追及されたのではないでしょうか。
さらには、株主へのIR説明の準備などにも追われ、上場にあたりメルカリは社内全体がパニックに陥っていたのかもしれません。本人確認というものは人の手作業ですし、オペレーションになんらかの混乱が生じていた可能性があります。本人確認ができていないまま売上金を振り込むと、それはそれで問題になりますから、一時的に“凍結”させた可能性があります。そのような後付けの対応が、今回のトラブルを招いたという印象です」(井上氏)