監査法人の責任も問われるべきだろう。これで、「連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているものと認める」とした監査法人を罰しなければ、日本では有価証券報告書は信用できないということを国が認めるようなものである。まさか、監査法人も司法取引をしたのであろうか。いずれにしても、日産のガバナンスとコンプライアンスに大きな欠陥があることは否定できないだろう。
“ゴーン氏独裁”を強調する構図
これまで、日産の責任追及についてあまり言及しなかった特捜部も、日産を追及しないことが難しくなり、「両罰規定」を持ち出して日産も立件したのではないか。今年6月に導入された司法取引制度で、7月に捜査に協力した三菱日立パワーシステムズが不起訴処分となったケースがあるが、日産も司法取引をしていた可能性もある。報道によると、社内の極秘調査チームを指揮したのは、今津英敏監査役といわれている。ゴーン氏が退任後に受け取る報酬額などを記した覚書に、西川廣人社長が署名していたとも報じられている。
日産のガバナンスの中核である監査役と代表取締役社長も問題を認識しているのに、立件されないとすれば、彼らも司法取引をしたということだろうか。ゴーン氏が逮捕された11月19日、西川社長は22時から本社で、一人で記者会見を行い、理路整然と落ち着いて、かつ激しい調子で“ゴーン批判”を繰り広げていたが、事前にゴーン氏の逮捕について準備していたことをうかがわせる。また、代表取締役社長でもあるにもかかわらず、自社の不祥事をまるで他人ごとのように話す西川氏の姿に違和感を覚えた人も多いのではないか。
その後、日産はゴーン氏の会長解任を決定したが、その時点では捜査の結果、ゴーン氏の「不起訴処分」や「嫌疑なし」という可能性を否定できず、解任判断が拙速であったと厳しく批判をされたり、訴訟などの法的な問題に発展したりする可能性がある。しかし、日産はその可能性をないと踏んで、ゴーン氏を非難し、解任した。日産の経営陣には、「自分たちは大丈夫」という確信があったようにみえ、企業として司法取引を行っているとみるのが自然だろう。
ただ、日産が起訴されても、逮捕者は外国人の2人のみで、日本人経営陣の逮捕者はなしという“ゴーン氏独裁”を強調する構図は不自然であり、今後、海外から格好の批判の標的になるかもしれない。