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LIXILが陥った機能不全…創業家が不可解なCEO復帰、市場で経営不安が広まる

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 2011年から16年までリクシルのCEOだった藤森義明氏は、海外企業の買収を通した事業規模の拡大を重視した。潮田氏にとって、藤森氏をCEOに置くことは、自らの意に沿った経営を実現するために最適な意思決定だった。

 しかし、2015年、リクシルが買収したドイツ企業の中国子会社ジョウユウが簿外債務を抱えていたことが発覚した。ここから、潮田氏の構想は狂い始めた。調査の結果、ジョウユウは不正な会計処理を繰り返し、債務超過を隠していた。2015年4~9月期、この処理に伴いリクシルは特別損失を計上した。翌年6月には藤森氏に代わってモノタロウの創業者で知られるプロ経営者の瀬戸氏がCEOに就任した。潮田氏は、瀬戸氏が海外事業の再編を進め、その上で収益拡大への取り組みが加速することを期待した。

機能不全に陥ったリクシルのコーポレート・ガバナンス

 
 瀬戸氏はバランスシートの再構築を優先した。同氏は、海外で買収した企業を売却し、経営リスクの抑制と管理徹底に取り組んだ。

 特に、瀬戸氏がビル外壁材を手掛ける伊ペルマスティリーザの売却を決定したことは、潮田氏との対立を決定的にした。これを受けて潮田氏は「リクシルの海外戦略を推進するには、自分が経営を指揮するしかない」と決心したのだろう。そのために潮田氏はかなり思い切った行動をとってしまった。同氏は、ガバナンスの理念を尊重するよりも、自らに都合よく行動した部分があるように見える。

 リクシルは、指名委員会等設置会社の組織形態をとっている。目的は、経営の執行と監督の分離、および経営の透明性確保だ。トップ人事などに関する意思決定プロセスが透明(説明可能)であることは、利益相反の防止や利害関係者(株主、地域社会など)の納得に欠かせない。そのため、指名・報酬・監査の各委員会メンバーの過半数が社外取締役で構成される。

 昨年10月末の時点で、潮田氏は指名委員会のメンバーだった。通常、指名委員会メンバーがCEOに選出されることは考えられない。しかし、潮田氏はCEOに指名された。これは、リクシルのガバナンスが機能不全に陥ったと考える理由の一つだ。

 加えて、瀬戸氏が解任されたプロセスもよくわからない。瀬戸氏は社外から招かれたプロ経営者である以上、地位に執着するつもりはないと発言してきた。これは、具体的な時期を念頭に置いたものではない。あくまでも、同氏の心意気を示していたにすぎない。

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